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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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ファンタジーなミク

雪山の話




遠目から見た分には、ただ獣型の魔物の群れがいるだけだとしかわからなかった。
どうやらこちらに気付いていないらしいと判断したミクは、戦闘を避けるために違う道にしようと進行方向を変える。
しかし、ちらりと見えた魔物達はなにかを貪っているようで、ミクは嫌な予感に襲われてゆっくりと魔物の群れに近付いていった。
ある程度距離を縮め、吹き付ける雪の切れ間に見えた それ にミクは目を見開く。
魔物が貪る傍らで、雪に埋もれかけた それ は棒のようであり、途中から細く五つに別れて鈍い緑と赤の斑の色をしていた。
自慢なんだ、という誇らしげな声が、ミクの脳裏に蘇る。
この深緑の色をもつ手甲は、共に見付けた仲間達との自慢なのだと、嬉しそうに、楽しそうに。
つい二、三日前、山間の村で出会った彼ら。その珍しさから声をかけたのだ。彼らの宝は見間違えようがなかった。
魔物は端と端をかじりあい、べりべりと剥いで赤と白の棒にしていく。
鈍く光を反射するそれには魔物の歯はたたなかったのだろう。既に見向きもせずただ貪っていた。

ちり、と僅かな痛みを頬に感じてミクはそこに触れてみる。
触れた指を見ると小さな氷がついていて、その意味を思いミクは瞼を閉じた。小さな痛みが再び生まれる。
また瞼を開いた時、ミクの瞳は空を見つめた。曇り空を映したまま、唇がゆるく開かれる。

その一音で、世界を鎮めたかのような錯覚

ミクの歌声は普段のやわらかいものとは違い、凜とした美しさで雪の渓谷に響き渡る。
魔が込められた歌声は低級の魔物達の行動を封じ、視覚化された音色が繊細に組み上げられていく。首飾りを摸した魔の制御補助具がうすらと水色の光を纏った。
短い歌の終わりが近づくと、掲げていた杖を両手で握り直して雪に覆われた大地に突き刺した。
細身の杖はミクの白い手によって雪にくいこみ、彼女の奏でる歌の終わりと同時に杖の頭頂を飾る紅い魔石が光を放つ。
光の軌跡が魔物達を囲って円を描き終えたその時、がづり、と大地が擦れた。
円の内側に走った亀裂から、ごぽりと水が湧きだし、そのまま空を目指しすさまじい勢いで噴出する。
涙すら凍らせる極寒の地で生み出された水柱は、滝を凌駕するかという勢いをもって己が魔によって生み出された存在だと主張するようだった。
魔の水は的確に魔物のみを直撃し、空を昇る水の直撃をうけた魔物達は勢いのまま空高くまで打ち上げられ、やがて水柱が消えると落下し地面に叩き付けられる。
ぐしゃりと潰れたその末路にミクは顔をしかめたが、すぐさま、赤も緑も一緒くたにして飲み込むように、なにもかもを雪が覆い隠してやがて見えなくなる。
そしてなにごともなかったかのように、ミクがやってきた時と同じ景色をつくりだすのだ。

谷間を白く伸びる道を前に、ミクは一人歌を歌う。
魔が込められていない、優しい、静かな歌を。
歌声は、白い景色に溶けていった。














魔法ってかめっちゃ物理攻撃っすね

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