ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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カイトとテトとちょっとルコ
ほのぼの
今日は仕事がなにも入っていない日で、珍しく昼まで寝てしまっていた。
もうみんなは仕事に出ていて、家の中には俺だけ。
いつもより静かな家がちょっと寂しいかな、なんて思って、とりあえずカーテンを開けた。
「あ、雪」
分厚い雲越しの鈍い光、ちらちらと舞っていたのは雪だ。
どうりでいつもより外の音もしないわけだと納得して、しばらく雪を眺めていたら、なんだかアイスが食べたくなった。
キッチンへ行って冷凍庫を開けてみたけどそこにアイスは無くて。そういえば昨日リン達も食べたからなぁ…
とりあえず買いに行こうと、財布を掴んで家の外へ。
道路にも雪が薄く積もって、辺りは全体的に白くなっている。
マフラーに顔を埋めて歩いていると、コンビニまでの道にある公園に見慣れたピンク色を見つけた。
公園の屋根のあるベンチの下から必死にまえならえをしてるように見えるのは、俺の気のせい?
「テト?」
「ん?カ、カイトさん!!」
俺に気付くとなんだか慌て始めたテトの左手には透明な器。かき氷とかを盛るやつだ。
俺も屋根の下まで歩いていくと、ベンチにはなぜかイチゴジャム。なにしてるんだろう。
「どうしたの?こんなとこにいたら、俺達だって調子悪くなっちゃうよ?」
「い、いや、これはだな、カイトさん。こちらにも事情があるのだよ」
「そっか。でも、どっか調子悪くなったらすぐ俺に言ってね」
そう言うとテトはぶんぶんと首がとれそうなぐらい頷いて、元気だなぁと思う。
そしてあ、となにか気がついたようで口を開く。
「カイトさん、しかし私は今無敵状態なのだよ」
「無敵状態?」
「ほら、これを見たまえ!」
そう言って俺の目の前にかざした右手には、白いもふもふとした手袋。
「ネルに作ってもらったのだよ。これで私の指先は無敵だというわけだ!」
「へぇ、ネルが作ったの?すごいね」
「あぁ、すごいだろう!人類を越えた存在のために作ったらしくてな、ほら見ろ!指がなんと7本あるのだ!!」
左手の器を右手に持ち替えて、今度は左手をかざす。
たしかにその手袋は掌と手首のあたりから一本ずつ指が生えていて、そのほほえましい出来に思わず笑みが零れる。
「よかったね、テト」
「あぁ!私はとても気に入っている」
テトもにこにこの笑顔で返して、二人で笑っていると遠くから声がした。
公園の入口に目を向ければ、ルコがこちらに向かってきている。
「あれ?カイト、なんでいんの?」
「テトがいたから、ちょっとね」
屋根の下に入ってきたルコは……あれ?
「あ、あれ?ルコ、おっきくなった?」
「んー?この前誕生日祝いに行ったときと変わってないぞ?」
「カイトさん、ルコの身長は2メートル近くある。知らなかったのか?」
「に、にめーとる?!」
見上げる位置にあるルコの顔はにこにことしている。そうか、そうか…この前座ってたから気付かなかった………
背は高くても細いからそこまで威圧感はないけど、複雑な心境。
「それで、ルコ。君はなぜここに来たんだ?」
「いや、テトがちゃんとやってるかなーって思って」
「ちゃんとできているにきまっているだろう?こんな簡単な作業」
「でも、まだちょっとしか貯まってないけどな?」
なんの話だかいまいちわからなかったけど、ルコが器を指さした事でピンとくる。
「かき氷、できそう?カイトにあげるんだろ?」
あ、そうなの?うれしいなぁ。
ありがとうとテトに言おうとしたら、テトは顔を髪と同じくらい真っ赤にしていた。どうしたんだろう?違うって怒ってるのかな?
「き、君は実に馬鹿だな!それを本人の前で言うやつがあるか!!」
「あー、ごめん。ごめんな!テト」
えへ、とルコは笑う。ってことはテトはやっぱり俺にくれるのか。
感謝の気持ちを告げようとすると、うっすらと雪が積もった器を持って、視線がろうろとしているテトはやがて、なにか息を飲み込んでから話しだす。
「あ、あのだな!私はこの前、フランスパンにイチゴジャムを乗せてみたのだ」
「へぇ、おいしそうだね。どうだったの?」
「なかなかうまかった。無味がやはり1番だが、2番の座を狙うほどだ」
じゃあ、ベンチのイチゴジャムはお弁当用なのかな、と当たりをつける。でも、なんの話なんだろう。
「そこでだ。カイト、お前はアイスをよく食べているだろう?それにもこのイチゴジャムを付けたらいいのではないかと思ったのだ」
「アイスとイチゴジャム……うん、おいしそうだね!」
「そこで、この雪が降ってきた。だから、雪を使ってかき氷を作ろうと思ったのだよ」
それはいい考えだなぁと関心する。じゃああのイチゴジャムはかき氷用なのか。
「それで、そのできたやつをカイトの誕生日行けなかったお詫びにするつもりだったんだよな?」
「ルコ!お前はさっきから何を言っている!!」
「そんな、お詫びだなんて、そんなこといいのに……でも、ありがとう」
「うっ……!」
お礼を言うと、テトは顔をさらに真っ赤にして言葉を詰まらせる。
ぶんぶんと頭を振ったあと、ベンチにおいてあるイチゴジャムをひっつかんで、ずい、と俺の方に突き出した。
「ルコはあんなこと言ったがな!べつに、カイトさんの為にやったことではない!たまたま、カイトさんが通り掛かったから、これを渡すだけだからな!」
ちょっと早口で言ったその言葉に戸惑っていると、テトは器とジャムの入ったビンを俺に無理矢理掴ませた。
にやにやとしてテトを見ていたルコと目があって、なんとなく察する。
ありがとう、と言って頭を撫でようとしたけど両手が塞がっていてちょっと困った。
でも、その言葉だけでテトも顔をあげて笑ってくれたから、それでよかったのかもしれない。
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