ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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カイトお誕生日話その1
カイトと何人かでこねたまみれ
「カイトー」
「カイトにぃー、ちょっといいー?」
「ん?どうしたの?」
呼ぶ声にカイトが振り返れば、そこにいたのはアカイトとレン。
なにか用事でもあったのかと近寄ってみれば、急に視界が閉ざされた。
「へ?!」
「リンよくやった!」
「ちょ、なにすんの!」
「アカにぃ、早く縄!縄!」
戸惑いが大量に含まれているカイトの声を無視し、荒っぽく両手を背中側で纏められた。
講義しようと開けた口にはなにか冷たいものが突っ込まれ、その後に受けた頭への衝撃でカイトの意識はどこか遠くへ飛ばされた。
*
「・・・・・・ふぇ?」
気がつけば、何もない部屋に転がされていた。え?どこここ?なにここ?
眼隠しと口の中にあったのはなくなってるけど、手は縛られたままだ。地味に痛い。
さっきのなんなんだよ!アカイトとリン達か・・・!でもまぁ、今いないのに怒っててもどうしようもないからなぁ。
さてどうしようかと部屋の中に視線を動かすと、目の前に落ちている一枚の紙を発見した。
「なにこれ?」
[誕生日おめでとうカイト君!]
[お前どうせなんやかんやでいそがしくて他のやつらにあえないだろ?]
[だからこの俺様が、こうしてお前にお休みをあげたってわけだ。]
[あー、そんなに喜ばなくてもいいぜ!これが俺からのお祝いだから!]
[そんなわけでしばらくおまえはこの部屋ん中ですごしとけ]
[きっといろいろと暇なやつらが来るだろうから、]
[縄はそんときにほどいてもらって。正直固く結びすぎて取るのめんどい]
[それじゃあな!]
[あ、口に突っ込んどいたアイスはおまけだから、感謝しなくていいぞ!]
えっと、これ書いたのは、うん。名前書いてないけどあの赤いのだろそうだろもう何考えてんだよ!!
しかも腕!解いてってくれ!もうなんだ・・・?俺、悪いことやってないのに・・・!!どう考えても嫌がらせとしか思えない!!頭を抱えることすらできないってどうなのこの状況!駄目だろ!
うああと叫ぶ声も虚しい。静かな部屋すぎる。
はぁ、とため息をついたところで、自分のたてる音以外の音が!!
誰?!助けて!!
静かに開かれたドアの向こうには、
*
静かに開かれたドアの向こうには、メイコがいたあああっと危ない。やばい、やばいぞこの位置は!アングルが!
「ちゃんと来てあげたわよー、カイト」
「あ、ありがとうメイコ。ごめん。こんな転がされたまんまで」
「別に謝る必要はないわ。あ、アカイトは絞めておいたわよ。それとはい、アイス」
「ありがとう、メイコ!」
「あとこれも」
頑張れ俺超頑張れ!全力で目を反らすんだ!
アイスのカップの隣に、ぽん、と置かれたのは白い金属製の箱だった。ん?
「え、これってもしかして?」
「最新の調律器具よ。この前カタログ眺めてたでしょ?」
「うわあ!ありがとう、ほんとありがとうメイコ!俺すごく嬉しいよ!」
「そんなに喜んでもらえたら私も嬉しいわ」
ああ、早く中を開けて手に取っていろいろしたい!とりあえず自分のやつ試しにやってみてそのあとミクとかレンあたりの調律をやらせてもらって…ああもう腕がもどかしい!
思わず勢いよく顔をあげたら背中が痛い。くっそうアカイトめ!でもとにかく今はこの縄を!
「メイコ、ちょっとこの縄取ってもらっ……て………」
「ん?どうした…の……」
俺が固まった理由をメイコも気がついたみたいで、うーわー。しせんがつめたいしむひょうじょうだよめいこさん!
「ごめ、ふ、ふかこうりょ」
「人のスカートの中見て不可抗力もなにもあるかっ!」
「がはぁっ!!」
残像を残して、左頬に衝撃。ああ、もう、むり。
「もうあんたなんか知らない!そのままアイスが溶けてくのを眺めてるがいいわ!」
「ちょ、メイコさん!」
律儀にふたを開けて離れたところにアイスを移動させてから、メイコは足音も荒く部屋を出ていった。
衝撃でまだぐらつく視界に映るのは、艶やかな白の箱と、今まさに溶けているアイス。
な ん の 拷 問 か と ! !
あああああああ、涙がしょっぱい。腕もなんか痺れてきた…
もう、もう俺の事はいいからせめて、アイスだけでも冷蔵庫に!!!
「誰か!誰か助けてくれ!!」
叫んだ声を神様か誰かが聞いたのか、部屋の外から話し声がした。
*
「…ったく……な……て……」
「…め……い…………」
「ああああもう!いいわよ!」
バタン!と怒鳴り声と一緒にドアを開けたのはネルだった。
表情は苛々してたみたいだけど、はっと息を飲んだあと部屋の中をキョロキョロと見回して、安心したみたいな、残念みたいな感じで息を吐いた。
「カイト!プレゼント持ってきてやったわよ!」
「ありがとうネルだけど今はそれよりも大事なことが!」
「はぁ?私のプレゼントより大事ってなによ」
「と、とりあえずそこのア」
「こんにちは…」
俺の声を遮って、ネルの後ろから出て来たのはハクさんだった。うんありがとううれしいんだけどさ!
とりあえずアイスの冷凍庫避難を頼もうと口をあけた俺の視界に、変な、いや、なんだ、変じゃないけどここにあるのは間違ってる気がするものが目に入った。
「ハクさん…それは、なに?」
「あ、これ、カイト君への誕生日プレゼントです。気に入って貰えたらいいんですけど…」
「私もハクのに合わせたの用意してきたんだから、ありがたく受け取りなさいよね」
ドン、と重い音をたてて、抱えていたものを床に置いたハクさんは、彼女にしては珍しい、とても満足感に溢れた顔だった。
まあ、うん。重かっただろうなー…
ハクさんが抱えていたのは、一抱えぐらいの大きさの金魚鉢。当然中に入っているのは金魚。
さっきまで抱えていた名残でまだゆらゆらと波打つ水の中に、ふよふよと揺れる小さな赤は見ていて、うん。和むよ?和むけどさ。なんで金魚…?
「あ……迷惑、でしたか…?」
驚いて黙りっぱなしの俺に、ハクさんが不安げに言う。横にいるネルの顔がなんだかすごく怖いんだけどどうしたんだ!
「なに、カイト。金魚いやなの?」
「そんなことないよ!ハクさん、ありがとう」
なんで金魚だかわからないけど、嬉しいのは確かだ。
それを聞いたハクさんはほっとしたように笑う。
と、ネルが金魚鉢の横に二つの物を置いた。片方は綺麗な包装用紙に包んであって、もう片方はコンビニのビニール袋に入れられている。
「はい、この袋の中に金魚ちゃんの餌あるから。これが私からのプレゼントね」
「あ、ありがとう」
「あとこっちは、その…………レンが来たら渡しておいて」
「ん?レンに?」
「べ、別に変な意味なんてないんだから!カイトはこれをレンに渡すだけでいいのよ!!」
「あれ?ネルちゃん、顔真っ赤……」
「うるさいわよハク!もう帰るわ!!」
「へ?わ、ネルちゃん待ってー…」
来た時と同じにバタン、と閉められたドア。なんか、不思議な人達だなほんと。
澄んだ水の中で真っ赤な金魚が水草をつっつくのを見てしばらく癒されたところで、俺の頭が水で歪んだ先にあるものを発見する。
や、やってしまった…!
金魚鉢の先にあるのは、たぶんさっきと変わらない位置にあるだろうアイスのカップ…!
腕も縛られたままで、なにも出来ないじゃないか…!!!
自分の無力さにちょっと泣けてきて、アイスにごめんをくりかえしながら俺は次こそはこれを解いてもらおうと心に誓った。
*
硝子製の丸の中で金魚が急にきょろきょろと動き出す。だれか来たみたいだ。
ゆったりとした足音と鼻歌が聞こえてきて、これは、メイトかな?
「よぉカイトー元気してるかぁー?」
「元気じゃないよ…メイトごめん、そのア」
「おいー、元気じゃねぇのか?どうしたんだよ」
「え、えっと、だからそのアイ」
「よっし、俺が悩み聞いてやるよカイト。恋か?恋なんだろ!」
金魚鉢をのけて俺の前にメイトが座ると漂ってくるアルコール臭。よ、酔っ払ってる……!
「恋じゃなくてね、メイト。後ろにあるアイスを冷凍庫に入れてほしいんだけど」
「そんな事で悩んでたのかー。大丈夫だ!俺にまかしとけ!」
力強い言葉と笑顔で返されて、俺はようやく安心して息を吐いた。
「じゃあ、今すぐキッチ」
「ぉおーカイト、お前手ぇ縛ってあんじゃん。危ない遊びに目覚めたのかぁ?」
「あ、そうだ!もしよかったらこれも解いてほし」
「そっかー、そんな腕じゃあ、俺が持ってきたプレゼントも無駄だなあ」
「へ?メイトもくれるの?」
「あったりまえだろー?まぁ、お前がそんな腕じゃあ無駄んなっちまったけどな」
そういってドン、と床に置いたのはいつから持っていたのかわからないけど一升瓶だった。わざわざピンクのリボンが巻いてあって、贈り物感を作りだそうとしている。
でもメイト中身が半分ぐらいないんだけど!
そんな腕じゃあ飲めねぇなぁなんて言いながら、一人で酒を飲み始める。それ、一応俺宛てじゃなかったの?!
「メイト、俺ね、腕の解いてもらったら一緒に飲めるん」
「あっはっは、俺じゃ無理無理。かわいそうに。こんな上手い酒なのに」
「ちょっとそんな!」
そのまま俺を放置してパカパカと酒を飲んで、空になった瓶を置いてメイトは立ち上がる。
「ハッピーバースディだカイト!楽しく生きろ!じゃあな!」
あっはっはと大きな笑い声の余韻を残して去っていった。
唯一のいいことは、一応アイスを持っていってくれたことかな……はぁ
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