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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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うろたんだーでほのぼの。
五兄弟。



やわらかな光が差し込むリビング。
そこのソファーで、黄色い髪をした少女が寝ていた。
ただその寝顔は安らかではなく、眉間に皺がよっている。
それはそうだろう。窓から差し込む光は少女の顔のあたりもやわらかく照らしているのだ。いくらやわらかくても光は光。眩しい事にはかわらない。
大きめとはいえ、人が横になって寝るにはサイズが足りないソファーの上で、黄色髪の少女は光から逃れるために寝返りをうっている。
何度も寝返りをし、ついにソファーから落ちようかという時にリビングのドアが静かに開く。
現れたのは少女とよく似た顔の少年。
黄色髪の少年が誰もいないのかとリビングを軽く見回すと鈍い音がし、少年を驚かせた。
泥棒かと警戒しながら音のしたソファーの方へと進むと、なんのことでもない。彼の半身がそこで寝ていた。
なぜ俯せで、ソファーに手を引っ掛けたまま寝ているのだろうと少女の奇行に思いを巡らせつつ、たった今貰ってきた果物を冷蔵庫へと入れに行く。
冷蔵庫の中に昨晩口を開けたばかりの牛乳がない事に気付き、翡翠の髪をした姉の仕業に少しため息を着いて、兄に牛乳がきれた事をメールする。
少年の家族の一人である翡翠の姉は、少年が思うに少し精神年齢が低い。自分で消費するのに自分で供給しようとしないのだ。
だがよくよく考えるとこの家の女性陣はみんなそういう人間だということにたどり着き、少し悲しくなったがすぐに立ち直る。
姉や兄が帰ってくるまえに夕食の用意でもしようかと思ったが、作るには早過ぎる時間であったし、夕食の当番は自分ではないのでやめた。
さてなにをしようかと伸びをして、視界に入った黄色髪の少女。寝返りをうったのか仰向けになり、ソファーからも少し離れて寝ている。
その寝顔は眉間に皺がよっていて、どうしたのかと思えばカーテンが開いていた。
しかたない、と薄いカーテンをひくと、少女の皺がなくなって気持ちのよさそうな寝顔だけが残った。
少年はしばらくその顔を見て、欠伸をひとつしてから少女の転がるカーペットの上に自分もよこになった。
多少の気恥ずかしさから少女から少し距離を置いて寝始めたのだが、すぐに少女が寝返りをうち少年の方へと転がってきた。
薄目でちらりと少女を見た少年は、諦めたような、くすぐったいような顔で少し笑った後、自分もゆっくりと寝入っていった。



柔らかな黄金色の日差しが赤くなった頃に、少々乱暴にリビングのドアが開かれた。
短めに切り揃えられた茶色の髪が乱れ、疲労困憊、という顔の赤い服の女性は、先程の少年と同じように部屋の中を見回し、そしてカーペットで寝る二人組を発見した。
お互いに向かい合い、胎児の様に丸まって寝ている姿にほほえましいと思うも、疲労が溜まりすぎたせいで微笑みも少々ぎこちない。
そのままふらふらと双子の方へと歩み寄り、黄色髪の少女の横へと転がる。
ふぁああと大きな欠伸をして、勝手に出てきた涙を拭った後に目を閉じる。
そのすぐ後にドアが開く音がし、女性はおかえりと言おうとするが、眠りの中に吸い込まれていく途中だったのでむにゃむにゃとなにやら口を動かすのが限界だった。
ドアを開けた翡翠の髪の少女は、カーペットの上で寝入る自分の家族を見てクスリと微笑み、冷蔵庫へと向かう。
だが冷蔵庫の中にはお目当ての牛乳が無かったのを見て、仕方がないので代わりに葱をかじる。
ソファーに移動して葱を完食した後、何か思い付いたのか、花が咲いたかのような笑顔の後にその口を開く。
翡翠の髪の少女から春の日差しのような、大切な人の心音のようなおだやかな歌が紡がれる。
徐々に消えていく夕日の代わりというかのように、部屋の中に少女の歌が満ちていく。
小さく静かに、それでも部屋中に響く子守歌をみごとにうたいあげると、歌う途中に自分も眠くなったのだろう。とろんとした瞳で黄色髪の少年の横に寝転ぶ。
静かに目を閉じた翡翠の髪の少女は、そのまま穏やかに眠りの世界へと潜り込んだ。



太陽も寝入り、その名残の明るさも去って暗くなった部屋。
深い海のような部屋の中に部屋と同じ色の髪の青年が入ってきた。
ドアを閉める際に自分の長いマフラーを挟み、奇妙なうめき声をあげる。
暗いままの部屋を不思議に思いながら電気をつけようとするも、その途中で自分の家族がくっつきあって仲良く寝ているのに気付く。
茶色の髪の姉が今日の食事当番だという事を思い出すが、くしゃくしゃになった髪と、眠りを一つまみたりとも逃さないというような壮絶な寝顔を見て、青年は起こすのをやめた。
弟に頼まれていた牛乳を冷蔵庫にしまって、一度リビングを出て寝室に掛け布団を取りに行く。
掛け布団は5人を包むには少し小さかったが、くっついて寝れば大丈夫だろうと青年は判断し、一先ず4人に布団をかける。
端に寝る茶色の髪の女性と翡翠の髪の少女、そのどちらの方に寝るか少々迷ったが、結局翡翠の髪の少女の横に並ぶ。
明日の朝が早いのはだれだったかと思考を回すが、まあなんとかなるだろう、と青年は思考を放り投げて、自分も眠りの輪に参加した。




「…………どうしますか。隊長」

灰色の戦闘服に身を包んだ集団の一人が、双眼鏡をのぞいたまま無線の相手へと問い掛ける。
戦闘員の言葉に答えたのは穏やかな声だった。

「うろたんだーの基地に戦闘をしにいったら女の子が昼寝をし、その後目を覚ます事なく益々増えていくとはな………」

戦闘服の集団、秘密結社ジャスティスは正々堂々と、本日午後2時30分よりうろたんだー基地を襲撃すると宣戦布告をし、その文書通りに基地まで行ったのだが、基地には少女が一人寝るのみだった。
寝入る少女を起こすわけにもいかないと、起きるまで待っていたら夜になり、敵リーダーのカイトまで寝てしまった。

「しかたがない、引き上げよう。
君達もむだ足を踏ませてしまいすまなかった。ゆっくり休んでくれ。それでは。」

無線が切れ、灰色の集団がゆっくりと自分達の基地に帰っていく。
なんともやるせない気がしたが、双眼鏡からみえた健やかな寝顔に心が癒されたようで、隊員達の心中も穏やかだった。


翌日の早朝に、ばっちり寝た黄色髪の少女がジャスティス支部にロードローラーでつっこんだのはまぁ、お約束というものだろう。







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