ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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イロモノ企画その1
カイトがラスボス
最後に続く部屋を開くと、ただひたすらに白い世界が続いていた。
壁があるわけでもなく、柱があるわけでもなく。
白く染め抜かれた、あまりにも広大なそこは、ミク達の侵入を静かな威圧感で拒む。
だが入口から遠い場所。一つの影があった。
ゆらりと佇むのは青い髪の青年。
それはミク達が今までずっと探していた家族であり、世界を破壊せんとする集団を作り上げた、カイトだった。
「カイトにぃ!!」
リンがカイトに駆け寄ろうとするのを、メイコが止める。
自分の名前を呼ぶ声に、背を向けていたカイトが振り返った。
「リン、レン、メイコ、ミク。どうしたんだ?そんな顔して。」
きょとんとした、まるで以前の、まだマスターとみんなで暮らしていた頃のような表情。
時間が巻き戻ったかのような感覚に、ミクはメイコの制止を振りカイトへと叫んでいた。
「お兄ちゃん、もう終わったんだよ!!
お兄ちゃんの仲間の人達はもうみんな、降参したの。私達に道をあけてくれたの!!
それにあの怖い機械も、もう動かせないよ。私達が壊したんだよ。
あれがなくちゃ、世界を壊すなんてできないでしょ!だから、だからもう、こんなこと、止めようよ!
私、お兄ちゃんと戦いたくなんか、ないっ……!」
ぼたぼたとミクの瞳から流れる涙。
今までの戦闘を物語るかのように傷だらけになった姿を、しかしカイトはなんの感情も含まない目で見つめるだけだった。
「そうかぁ。あいつら、負けちゃったのか。」
ミクから床へと視線を落とし、カイトがぽそりと呟く。
するとまるで、泉に投げ込んだ石が波紋を広げるがごとく、カイトの表情が変わっていった。
そしてひそやかな笑いがその口から漏れだす。
再びミク達に向けられた蒼い瞳は狂気に染め上げられており、彼の姉弟達を怯ませる。
「でもよくやったじゃないかあいつら!見事、見事に計画を遂行してくれたよ!!
これでやっと、やっと世界は終了される!」
「何言ってんだよバカイト!ミクねぇ言っただろ!!
負けたんだよ!あんたは負けた!今時ガキだって言わないような、つっまんない冗談は終わったんだ!!だから、もう、」
「そうそうあいつら、殺されたがってなかったか?
降参したって言ってたけど、殺してくれ、とか、生きていたくない、とかさ、言ってただろ?
殺してやった?ちゃんと、綺麗に、塵さえ残さず。まさか、まだ生きてるとか?」
「な、なに言って、んだよ!!殺すわけないだろ!!俺はカイトにぃとは、あんたなんかとは違う!!それに」
「マスターが殺人はいけないって言ってた、でしょ?」
カイトの表情がさらに笑みの形で歪む。
「でもそんな人はもういないんだよ、レン。
死んだ者は何も語ってくれない。
笑ってくれない、怒ってくれない、一緒に生きてくれない。
そんなものに意味があるのかい?だったら、生きている人の意思を優先させたほうがいいって、俺は思うけどね。」
「でも、言葉がある!確かに、いなくなっちゃったけど、マスターは私達に、生きてって言ったんだよ!!
なのに、こんな、みんなの生きるのを止めちゃだめだよ!それにもう、こんな戦いは終わったんだよ、カイトにぃ!!」
「本当に、そんな風に思ってるの?リン。」
不意にカイトが右腕を上げなにかを撫でるような仕種をした。
その様子を見て、己の考えが的中してしまったことに、メイコの顔が曇る。
「カイト、やっぱりあれは、偽物だったのね?
あんたの部下をみんな犠牲にようとしてまで、本物の発動条件を揃えていたということかしら。」
「当たりだよ、メイコ。まだなにも終わってない。
―――――終わりは、今から俺が始めるのさ。」
その言葉がきっかけだったのか、白い世界がものすごい勢いで色付けられてゆく。
変わってゆく景色に緊張を走らせ警戒する妹達に反し、メイコはさめた表情でカイトとの会話を続ける。
「あんたは、マスターの遺志を汲み取ったと思ったんだけどね。」
「残念。俺はマスターの遺志に反するほど、マスターの事が好きだっただけだよ。」
景色が変わっていくにつれ、カイトの姿にも異常が現れた。
彼の背後からは金属が特有の無骨な光を放ちながら伸び、カイトの肉を食い破り融合していく。
金属がカイトの肩や背中に突き刺さるたび、彼を構成しているモノが飛び散り、不快な音をたてる。
確実に痛みを伴っている光景だが、カイトは笑いながらそれを受け入れており、リンは思わず後ずさった。
カイトの後ろに存在したのは、先程メイコ達が破壊した機械を二回りほど小さくしたものだった。
ミクやレンと同じくらいの高さになったそれは、彼らの兄と完璧に融合しようとしている。
この星全てを焼き尽くすにもまだ余力をもつ兵器がカイトの一部になるよりも先に、周囲の光景の塗装が完璧に終了していた。
「ここは、私達の町?!」
「な、なんでこんなとこにきちゃったの?!」
現れた景色はミク達の故郷の町だった。いや、景色が現れたのではなく、ミク達が転移してきてしまったのだ。
「カイトにぃ、まさか…」
辺りを見回していた視線をもどすと、背中から下半身までを機械に浸蝕されたカイトがそこにいた。
歪に笑う口元はそのままだが、蟀谷のあたりを這う金属のせいで引き攣る目尻からか、泣いているようにも見えた。
「この町を、最初に消そう!
丁寧に丁寧に、心を込めて、マスターの思い出を全て!!
そのあと、マスターの存在を否定したこんな世界、俺がさっさと破壊してやる!!!!」
体の中で反響した声が奇怪な音となり世界へと響く。
その姿をリンとレンが今にも泣きそうな表情で見つめる。
その横で、ミクが袖で強引に涙を拭い、意を決して異形となった兄に宣言する。
「そんなこと、させない!!
マスターが存在した証拠を、マスターがいた世界を消させなんて!!」
それに続いてメイコも大剣を構える。
「それに、あんたを死なせてなんかやるもんですか!」
「一緒に生きなきゃやだよ、カイトにぃ!!」
「バカにぃはずっとほわほわしてアイスくってりゃいいんだよ!!」
リンがそう言って拳を握り、レンも双子の短剣を構えた。
戦闘体制をとる家族を見て、カイトはなんらかの感情を浮かべかけたが、それも狂気に塗り潰される。
「やれるものなら やってみろ!!」
かくして、終わりの始まりが開始した。
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ながくなったしごちゃごちゃしてますね。
はたしてこの話に出てる方々はボカロであるといえるのか……
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