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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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ミクとレンとカイトでファンタジー
唐突に始まり唐突に終わり




「レン君、これ、ちょっと大変だよね……?」
「ミクねぇ、ちょっとどころか、」

辺りを見回し、自分達の絶望的状況を再確認してから、ダガーを構えている黄色髪の少年、レンは告げる。

「最上級に最悪だよ。」 


彼らの背後は崖。
老朽化が進んでいたのか誰かの悪戯か、かかっていたはずの対岸への吊橋は今ではただの板切れに成り下がっていた。

そしてレンとミクを囲むのは大小様々な魔物の群。
いつもの二人ならば雑魚敵など簡単に退けられたが、今回はやけに数が多かった。
そのせいでレンは愛用のダガーの一本を失い、ミクは唄を紡ごうにも集中力を使い切ってしまったのだ。
響剣士であるレンがダガーを一本失えばそれは、力の四分の一も発揮できないし、唄を紡げない唄歌いなんて戦力外もいいところだ。

「ミクねぇ、ほんとにもうなんも歌えない?」
「ごめん、もう回復の唄も歌えるかどうか…」
「マジか……きっつー」

言いながらも、覚悟を決めたレンは、あらためて一本になってしまったダガーを構える。
次々と、狼型の魔物がその黒々とした毛並みを光らせ少女に襲い掛かる。
魔物の牙からミクを守るため、レンがダガーを振るい魔物を捌くも、それにもいつか限界は来るだろう。
その限界を待つように、魔物達はいくら切り捨ててもどこからか現れて、全くキリがない。
しかもミクの唄や、レンのもう一方のダガーがないので広範囲の攻撃で魔物を一掃する事もできない。
僅かに逃げる隙を作るも、しかし逃げる道がなく、あとはもう殺されるしかないかもしれない、という考えが二人の頭が過ぎったとき。
不意に、魔物の群を音が貫いた。

「え?」
「なんだ?」

半円形に二人を取り囲み、今にも食事にありつこうとしていた魔物達が、恰好の餌から視線を逸らして群の奥、群を挟んでミク達のちょうど真正面の辺りを見ていた。
先程の音の源であろう場所。
まるで先程の音を境に時が止まったかのような景色の中、また音が荒野に響き渡った。

低く大地を這うような音が辺りを埋め、レン達の体の中をも浸蝕するかという寸前。
這いまわっていた音程が空をも突き破りそうな程、急激に上がった。
それに呼応し、魔物達の内側から音の衝撃がその黒の毛皮を破り、先程二人を苦しめていた魔物が、音の源の辺りから次々と消滅していく。

「すごい……なんなんだろう、この唄…………」
「つうかこのままだと俺らもあれになるんじゃ…?」

群の終わりを感じた魔物が、死の音から逃げようしているがそれさえも破裂し消えている。レンの恐れも当然だろう。
だがミクはレンのように恐れを抱くこともせず、辺りに消滅を促す音に聴き入っている。

「多分、大丈夫だよレン君。私、この唄を………どっかで聞いたこと、ある。」
「へ?」

急激に音程が上がってからは、その音は緩やかに上がったり下がったりしている。
まるでここで起こっている事とは無関係のようだ。
音の源が徐々に二人に近付いてくる。もう魔物はほとんどいない。
必死に記憶に潜るミクとは対照的にレンは音の源に向かってダガーを構える。
レンの視界が音の中心人物を捕らえたとほぼ同時に、ミクが顔をあげた。

「この曲、まさか、お兄ちゃん?」

現れたのは、日が照り付けているにも関わらず、厚着をしている一人の男。
その青い視線が二人を捕らえ、驚いたように音が途切れる。今までの音は間違いなくこの青年からうまれていたものだった。
瞳を丸くし、ぱくぱくと何度か口を泳がせた後、魔物を殲滅した人間だとは思えないほどうれしそうな笑顔で、彼の家族の名前を言った。

「ミク!レン!生きてたのか!!」
「お兄ちゃんこそ!」

怪訝そうな顔で青年を見るレンの後ろからミクが走り、彼女の兄に抱き着く。ミクの顔も笑顔に綻んでいた。

「ミク!!かわいくなったな!!」
「あたりまえだよ!もうあれからずいぶん経ってるんだよ?お兄ちゃんが変わらなさすぎなんだよ!!」
「確かになー、もう10年ぐらいだっけか?」
「ちょうど10年!ずっと連絡なくて、お姉ちゃんもすっごい心配してたなに。あ、そうだ」

なにやら話しに入れないレンの存在にミクがようやく気付いた。

「レン君、この人が、10年前からどっか行ってたお兄ちゃんだよ!ほら、たまに話に出てたでしょう。覚えてないかな?」
「え……っと、?」

幼い頃の朧げな記憶が蘇ってくる。
青い髪に青い目。手を引かれて歩いた景色。

「カイトにぃ?」

その言葉にカイトはにこりとまた笑う。

「久しぶり!俺の大好きな家族!!」




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