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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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カイトとメイコ
ほのぼの。



ああ、しあわせだ。
歌でほてった喉をアイスで冷ます。この喜びったら。
アイス専用の小さめのスプーンは、ランキングで初めて一位になった時にミクがプレゼントしてくれたものだ。
小さいスプーンの方が大きいスプーンよりいっぱい食べれるよ、というミクの言葉は衝撃だった。
まさにその通り。ミクももっと早く教えてくれればよかったのに。
それにこのスプーンは繊細なデザインに反しかなり頑丈で、どんなに冷えたアイスでもすぐに食べれる優れものだ。
これがあればきっと刑務所からの脱出だってできると俺はふんでいる。

さてもう一口、とスプーンで薄く掬ったアイスを口に運ぼうとしたら、ドガァッという破壊音。
あまりの音量に腕が跳ねる。
でもどうせ盗賊かテロリストかお姉様かの三択だろう。
ガキャッ
今度は(あくまでも比較的)軽く開いた扉の先にいたのはお姉様でした。

「おかえりー。ドア壊れるよ。」
「ただいまー。そしたらあんたがなおせばいいじゃない。」

理不尽だ・・・
そういえば当番制だった家事は俺ばっかやってる気がする。どういうことだ!

「あー、つかれたぁ。カイトー、お酒ー」
「俺も今日仕事だったし今アイス中なんですけど?!」
「別に、キッチンにだって流しがあるんだからいいでしょ。」
「俺流しに行く必要ないよ。」
「だって服にアイス跳ねてんじゃない。早くどーにかしないとシミになるわよー?」
「跳ねてる?!」

シャツを見れば俺の、アイスが!
今まさに染み込んでいる!!
なぜ?!どこでだ!こんなにもったいないことを!!
ま、まさかメイコが帰ってきたときか!!!!
うわぁ、なんで、ええ、そんな・・・

「はいはい、へこまないへこまない。それと早くお酒とってくる。」

ああ、悲しい。何が悲しいってこんなへこんでるのに酒をとりにいっちゃう俺が。
って、もしかしてこの悲しみの原因はメイコさんでは?あらら?

焼酎の瓶とコップを出してふと思う。
焼酎と水って、似てるよね。
このコップの中に水を入れ・・・いや、バレたら俺の命が危ない。それに匂いでわかるし。おちつけ。
でもどうにかして俺のシャツに消え去ったアイスの仇をうちたい・・・
さてどうする。どっかの俺はなんかのリーダーだかをやってるからその手の作戦の一つや二つ、俺にも思いつけるだろう。
焼酎と塩?焼酎と砂糖?いや、これはおいしそうだ・・・
むしろつまみの方に細工を・・・ってああ、なにつまみまで出す方向なんだもう。

「カイトー、まだぁー?」
「はぁ。」
「なにため息なんてついてんのよ。」

その言葉、俺のメイコには言われたくないランキングの5位以内には確実にランクインしてるよ。
コップをメイコにしぶしぶ渡す。結局いい作戦は思い付かなかった。
しょうがないから残りのアイスを、と思ったら溶けてた。地球温暖化の馬鹿。
しょうがないから溶けたバニラを掬って食べる(飲む?)。
おいしいけどやっぱ冷たくなくちゃなあ。

俺の正面に座るメイコはおいしそうに酒飲んでる。理不尽。
しょうがないから予備アイスでも持ってこようと立ち上がろうとしたら、メイコが何やらあ、と思い出した顔。
その後帰りに持って帰って来たビニール袋をがさがさあさりだす。

こ、これはもしや、その中にはお詫びのアイスが?!
思わず期待してメイコを見ていたら、
袋から出て来たのは楽譜だった。そんなとこに入れるなよ。

「そうそう、カイト次私と歌うんだって。これ、楽譜。」
「え、どんな感じの曲?」

やっぱVOCALOIDですから。
そういう方に話が行くと怒ってたのもなんかどうでもよくなったりしちゃうんですよ。
歌を引き合いに出すなんて卑怯な!

「んー、大人っぽい。」
「あーこれは、歌詞がちょっとあれかもね。」
「でしょ。マスターもこれはミク達にはまだ無理だと思うって言ってたし。」
「レンなんて顔真っ赤になっちゃいそうだ。」
「それはそれで楽しいわね。」

メイコがクスクス笑う。
アルコールが入ってるからちょっと顔が赤くなってて色っぽい。かもしれない。

「ねえ、マスターに退廃的な色っぽさで、って言われてるんだけど、それってどんなのだと思う……?」

気位の高い猫みたいな笑みでそんなこと言うメイコさん。
……………、ああ、これはだめだろう。

完っ璧酔っ払ってる。

そこらの男だったら落ちるかもしれないけど俺はほら、弟ですから。
親愛なる姉様が酔っ払って殴り倒した方々への謝罪に走り回ったのは何回あったっけ?
まぁそんなわけで、

「………、そんな感じじゃないと思うけど?」
「そ。」

さっきまでの雰囲気はどこいったんだってほどに軽い返事を返された。
つまんないわー。とコップに残った酒を煽って伸びをしてから立ち上がる。
それからあくびを一つして、メイコは部屋に戻るらしかった。

「退廃的な色っぽさでって、カイトが言われてることなのよねー。だから頑張ってエロくなりなさい。」
「なんだそれ。メイコはなんて言われたんだよ?」
「秘密よ秘密。歌うときのお楽しみ。」

今度は静かに(まあこれが普通なはずなんだけど)扉を開けて振り返る。あ、いい笑顔。

「カイトなんてきっと鼻血だして倒れちゃうんだから。バカイトめー。」

あっはっはと豪快に笑って去っていくメイコ。なんなんだほんと。
扉の向こうから、袋の中のやつ食べていいからーとか聞こえた。
袋をのぞくとそこにはアイス。
なんだかなぁ。
ほんとおかしな姉だよ、と思いつつ感謝もしっかりして、アイスをいただく事にする。
あ、ちょっとまってこの感覚はもしやっ、!
傾けないよう注意深く蓋を開ければ、そこにはやっぱり溶けたアイス。

「……なんだかなぁ。」



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