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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

誤字等気になることがあり
ましたら是非ポチっと。只今、
御礼文でヤンデレだらけ




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年末年始企画!
ボカロでバトロワ です
とか言いつつカイトと帯人とカイコとちょびっとメイコしかでてきません

*注意*
たぬぃのバトロワイメージが、

・首輪爆弾
・血みどろバトル
・救われない

なので、これに基づいて書いております。
一つでも苦手なものがある方にとって、 不愉快な描写 、展開  があるかもしれません。
ん? と思った方は回避お願いします。




深い霧に阻まれ、視界は最悪だった。
そんな中で小屋を発見できたのは僥倖といえるだろう。
カイトは恐る恐る、朽ちかけた窓から中を覗いた。
小屋の内側は薄暗く、視界では確認できない。
ただ、焦げたような臭いと、小さな水音をカイトは捉えた。
誰かいるのかと耳を澄ますが、なにかが動く音はしない。
水が漏れているだけかもしれないと判断し、カイトは窓から小屋の中に入った。

そもそも彼に、迷う予知などなかった。
支配者気取りの狂人の遊びに付き合うつもりは毛頭なく、カイトはこの首輪を外すための道具を探していた。
工具など森の中に落ちているはずはなく、あるとしても建物のどこかだ。ゲーム開始から歩き続けてようやく見つけたのが、この小屋だった。
最後の一人になるまで殺し合え、と笑う男の言うことなどカイトは聞くつもりはなかった。
ゲームに拘束する爆弾付きの首輪といえど、道具さえあれば彼には外すことができた。そう、道具さえあれば。
カイトの願いは、全員の首輪を外し、逃げることだった。
しかし、かつてマスターであった人間を慕い、その言葉に従うしかできない家族もいるのだ。
家族の中から誰も犠牲を出さないためには、早く道具を見つけなければならない。
小屋は床板が腐りかけているらしく、カイトが足を置いただけでギシリと音をたてた。
警戒して辺りを見回すが、動くものはない。聞こえるのは已然として水音だけだ。
一先ず息をつき、薄暗い小屋の中で目を凝らす。
狭い小屋には小さな机と棚、奥の最も暗い場所にはベッドがあるようだった。
道具を探すために棚に近付き、そこでカイトは気付く。
彼が今見た限り、水音を生むようなものはなかったのだ。
たまたま見落とした、と自分を納得させるには、嫌な予感が大きすぎた。
ぐるりと、暗闇を見回す。
徐々に順応してきた視界は、ベッドの上にある なにか を捉えた。よくよく聞けば、水音もベッドの上あたりからだ。
カイトを殺す気ならば、気付いていない時に襲えばよかったはずだ。ならばベッドの上には自分と同じ考えの誰かがいるのかもしれない、とカイトは口を開いた。

「誰か、いる よね?」
「     ぃ ?  」

返ってきたのは、静まり返った小屋の中でさえ消え入りそうなか細い声だった。
しかし、それは確かにカイトの聴いたことのある声だ。

「カイコ?」
「 ぁ 、 ぃ と、 たす  ねがぃ   」
「……? どうしたんだ?」

ベッドへと進めた足が、硬質な何かに当たる。
カシャリ、という音に目をやると、カイトは絶句した。
 それ から無理矢理目を剥がし、ベッドに座るカイコを確認する。
薄暗い小屋の中とはいえ、近寄れば彼女の肌の白さは浮き立つようだ。
そしてその、浮き立つような白は、途中から小屋の闇と同じ黒へと変わっていた。

「その手、だれにやられたんだ!!」

捩切ったような切り口で、カイコの白い手は失われていた。床に落ちていたのは、彼女の手だった。
それも片手だけではない。両方の腕が手を失い、白い棒のようになっている。
警戒することも忘れて声を荒げたカイトに、小さな泣き声は必死に訴えた。

「 ちが、 れより  ぇ ん、 メイコさん を っ、」
「え………?」

壊れた腕で、カイコが抱えていた それ を持ち上げる。焦げた臭いが鼻についた。
目を凝らし それ 視界に入っても、それ が何かカイトにはわからなかった。いや、わかりたくなかった。
呆然として焦げ付いたそれに手を這わせる。

「メイ コ……」

たとえ瞼が閉じられていても、見間違える事はないほど見慣れた存在だった。
しかし目元から下、下顎からは金属を覗かせるだけで、かつて美しい歌を奏で、家族を叱咤し、明るい笑い声をあげていたそれは、跡形もない。
弱々しいカイコの腕からそれを受け取り、抱く。頭部だけとなった姉は、あまりにも小さかった。
彼女の 残り はベッドに、カイコの膝の上に倒れていた。
ドクリ、と感情が思考に追いつき始める。

「なにが、あった?」
「くびわを、外そうとしたんです。わたしもメイコさんも、ころしたく なくて、メイコさんが 、 じ、じっけんだいになる って、それで、わた   わたし 、   」
「もういい」

そこから先は語らせるまでもなかった。
千切れた両手と首。二人は首輪の解除に失敗したのだ。
けれど、メイコの閉じた瞼からは恐怖も不安も読み取れない。彼女はカイコを信じ、全てを託していたのだ。カイコが失敗したとはいえ、それを批難することはできなかった。
大きな喪失感とやるせなさ、ゲームの主催者への怒りがカイトの内で沸騰する。
回路が焼き切れそうな感情に強く歯を食いしばると、剥き出しの金属がカイトに縋った。

「カイト、あ、あなたなら 、メイコさんを たすけられるでしょう?おねがい 、わたし、メイコさんを、 メイコさん に、 、」

ぼたぼたと、カイコの瞳から流れる涙は止まらない。
壊れた瞳で助けを求める彼女は痛々しく、カイトの胸が痛む。
メイコを直したいのはカイトも同じくだ。
しかし彼の手元にはなんの道具もない。完全に砕けた発声機関を元通りにすることも、カイトの技術では無理だった。
引き裂かれるような痛みと共に、言葉を吐き出す。

「俺には、なにもできない」
「カイト、おねがい、おねがい、メイコさんを 、わたし、おねがい、カイト、」
「…っ、無理なんだ、ここにはなにもない」
「おねがい」

カイコの白い腕が、ベッドに転がっていたもう片方の手を指す。
掴めない彼女に代わってカイトがそれを取る。

「これって…!」

暗がりに慣れた目が捉えたのは、焦げ付いた指に握られた一つの道具だった。
この小屋で見つけたのか、彼らがいつも使っている物よりは古い型だが、カイトにとって首輪を外すには充分だ。

「おねがい、メイコさんを、」
「カイコ、今メイコにはなにもできないけど、これで首輪を外して逃げれば、きっとなんとかなる」
「メイコさん、メイコさん、メイコさん、」
「君の首輪を外したら、俺は他のみんなの首輪を外しに行く。だから、メイコを頼む。助けてくれ」
「わた し  ? でも、わたしは、」
「大丈夫。きっとできるよ。今、これを外すから」

マフラーをほどき、カイコの首輪に触れる。
ぐるりと首を一周する鈍色の金属。喉元で固定するように爪を皮膚に潜り込ませたそれは、悪趣味の塊だ。
爆弾部分を刺激しないように道具を動かしていると、ビクリ、とカイコが大きく痙攣した。
今まで微動だにしなかったというのにどうしたのかと、カイトが首輪から視界を上げる。
異変は、見間違える事ができなかった。

彼女の左目に、奇妙な物が生えている。
咄嗟に振り返れば、小屋の戸が開いており、そこに立つ人影。飛来する物が視界に入り込み、反射的にカイコを庇う。
肩に生まれた異物感と人の迫る音に舌打ちし、カイコを抱えて飛びのくと、腕の中の体が引きずられた。
痛みを訴える肩では抵抗できず、カイコが襲撃者に奪われる。床が鈍い音をたて、白い腕が跳ねた。
彼女と入れ代わるように踏み込んできた襲撃者に突き飛ばされ、カイトは壁に背を打ち付ける。肩に刺さっていたものが、軽い音をたてて床に落ちた。
追撃が来るかと身構えるが、カイトの予想に反し、手が伸びてくることはない。
顔は確認できないが、薄闇の中、襲撃者が無造作にカイコを拾い上げていた。

「…やっぱり、カイトは外せちゃうんだ」
「………帯人…」
「だめだよカイト。マスターは首輪を外せって言ってない。壊し合え、って言ったんだ」

襲撃者――帯人はどこか恍惚とした声で言う。

「ゲームをダメにする奴を壊したら、マスターはきっと、すごく褒めてくれる」

破砕音と共に、カイコの眼球に刺さっていたものが取り出される。細身のアイスピックは、カイトの肩に刺さっていたものと同じだ。
付着した循環液もそのままに、アイスピックを持って帯人は笑った。

「早く、マスターに会いたいな」

常よりも幼い声の後に、帯人はカイコをカイトに投げつける。力無い体を抱き留めると、鋭い尖端は目前に迫っていた。
抱えたカイコを手放すわけにもいかず、振り下ろされたアイスピックをとっさに避ける。
大振りな動作は避けるのにたやすいが、一人分の重さがカイトの動きを鈍らせた。
逃げるにしても、帯人は入口を背にしており、それをすり抜けるのは困難だ。徐々に追い込まれ、凶器を避けきれなくなる。
カイトの左腕にアイスピックが深く突き刺さり、片腕が壁に縫い付けられた。
引き抜こうと無理矢理腕を動かすも、そのたびにより深くまで埋まっていく。やがて柄の部分しか見えなくなると、帯人は動きを止めた。
駆動させる機関が壊されたのか、左腕に力が入らない。
片腕でカイコを抱える姿を見て、帯人は笑う。

「もう、壊れてるのに。そんなに大切?」
「……るさい!帰って、直せばきっとまた…」
「直せば…?直ると思ってる?電脳がえぐられてたら、直したところでデータは戻らない」
「お前、そこまでわかっててやったのか…」
「だって、直ったらきっとマスターは残念がる」

アイスピックを捻ると、ぶちぶちと音をたててカイトの腕が内側から破壊される。

「念入りに、壊さなきゃ」
「   っぅ……!!」

一際大きな痛みの後に、左腕の感覚が消失した。痛覚を伝える事さえできなくなったようだ。

「これでもう、首輪を外すのも難しいよね。あぁでも、カイトってどっちが利き腕だっけ」
「…………」
「わかった。こっちも壊すから、それ、放して。邪魔」

眼球から、ぼたぼたと中身をこぼしているカイコを指して帯人は言う。
ぴくりともしない彼女はカイトの動きを制限したが、帯人にとっても、腕を破壊する妨げになっていた。
左腕を壁に貼り付けているが、なにかの拍子に逃げられ、他の者の首輪を外されてゲームが破綻するのは、帯人の最も避けたいところだった。
腕さえ破壊すれば、ゲームは続く。そうなれば、最終的に生き残るのは一人だ。逃げられようが、それはいつ壊すかだけの問題になる。
カイトはきつく、帯人を睨みつけた。

「放すわけないだろ」
「首輪外せなくしたら、逃げてもいいよ?」
「…………」
「………面倒臭いな」

ふぅ、と帯人は溜息をつく。
しかし狂信を映した笑みは揺らがない。

「俺のオリジナルの、最期のワガママだし。聞いてあげるよ」

帯人がカイコの喉元を掴む。
カチ、という小さな音。
それに続く、鼓動のような電子音に、カイトは硬直した。

「これでいいんでしょ」

言い残し、帯人が後退する。
爆弾と化したカイコ。それでも彼女を突き飛ばせない。
カイトの体に鈍い衝撃が走った。
帯人ではない。カイコだ。
カイコは不揃いな腕でカイトを突き飛ばす。
その反動で、彼女の体がカイトから離れ、後退した帯人へと倒れ込む。
帯人は驚愕に目を見開く。
もはや動かないと、二人は思っていた。
それでも、カイコは申し訳なさそうに微笑んだ。
電子音が途切れ、一瞬の沈黙。

「みんなを、

カイコの声を掻き消すように、その喉元で赤い光が膨らむ。
最後の言葉は生まれることなく、爆発音に飲み込まれた。
光に視界が遮られ、それが治まった時にカイトが目にしたのは、首のない体だった。
彼女を避けきれなかったようで、腹部を爆発でえぐられた帯人は、床に倒れている。
呆然と、その二つを目に映し、カイトは自由になった右手で腕を貫いていたアイスピックを引き抜いた。
カイコの体を跨ぎ、帯人の傍らに膝をつく。

「壊す?」

もうろくに動かないけど、と帯人は笑う。
カイトは痛みを堪えるように顔を歪め、 アイスピックから手を放した。

「壊さない」

代わりに、取り落としていた道具を拾いあげ、帯人の首輪に手を伸ばす。
暴れるか、とカイトは覚悟していたのだが、帯人は抵抗せず、首輪を外す作業を見ているだけだ。
左腕が壊れているせいで先程よりも時間がかかっているが、丁寧な手つきは首輪を爆発させることはなかった。
爆弾部分を取り外すと、首輪は音もなく半分に割れ、帯人の首に赤い跡を残すだけになる。
帯人は、ちらりと首輪の残骸に目をやり、それを取ろうと手を伸ばす。

「せっかく、マスターにもらったのに」

首輪として使い物にならなくなったそれを自分の顔の前にもっていき、残念そうに呟く。
カイトは、帯人から目を逸らした。最悪のゲームを作り出した者を慕う姿を、これ以上見ていられなかった。

「………後で、戻ってくる。そうしたら、直すから。 待っててほしい」

道具をポケットにしまい、立ち上がる。ついさっきまでは気にとめることもなかった床の軋む音が、いやに耳についた。
小屋の外へと二、三歩進んだところで、小さく名前を呼ぶ声がして、カイトは振り返った。
帯人はまだ、顔の上の首輪の残骸を見ている。
名前を呼んだのは彼だった。

「……なに?」
「…………あのさ、」




「マスターは首輪を外せって言ってない。壊し合え、って言ったんだ」


止める間もなく、残骸が帯人の瞳に突き刺さる。
不愉快な音を生みながら、自らの手で、帯人は首輪の残骸を瞳から電脳へと押し込んだ。

「……なッ…にを!!!」

カイトが駆け寄った時には、残骸の半分以上が突き刺さっており、
帯人は既に壊れていた。

「…なん……で…」

力無く、カイトが呟く。その膝が折れ、床に崩れ落ちた。
カイトの問いに応えるものはなにもない。
暗い小屋の中、思考し、行動するのは、彼一人になった。

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