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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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学パロでハロウィン
カイトとアカイトと鏡音と



夕食を終えカイトとアカイトがそれぞれくつろいでいた部屋に、コンコン、と小さなノック音が訪れる。
この時間帯はどの部屋も同じようにだらだらとしているものなのだが。誰だろう、と読んでいた本を置いて、カイトが立ち上がった。

「はい?」
「カイトにぃ、Trick or Treat!!」

ドアの先にいたのは、部活の後輩である金髪の双子だった。
ハロウィンでおきまりの台詞と共にタックルのつもりかと疑いたくなるような勢いで二人に飛びつかれたカイトは、思わず床にひっくり返った。

「ハッピーィハロウィイーン!!ほらほらカイトにぃ、おいしいお菓子くれなきゃ悪戯しちゃうよ?」

腹のあたりに乗ってニヤリと笑うリンに、カイトとアカイトは苦笑する。二人の脳裏にはここ何年かのハロウィンの記憶が再生されていた。ハロウィンを忘れていたせいで何度も酷いめにあっていたのである。
しかし今年は、今日がハロウィンだということは知っていたし、もちろんお菓子も用意していた。現に、昼間にも襲撃してきた後輩達にも飴をあげてどうにかしてきたのだ。命綱とでもいえる飴が入った缶は、昼間の激務を終えて今は棚に置いてある。
むしろなぜ、リンとレンの二人が真っ先に来なかったのか、という事を先ほどカイト達は話していたぐらいである。
つまるところ、今年の二人は悪戯などされる気は無い。
毎年ハロウィンの存在を忘れ、その度にリンとレンに酷い悪戯をされていた経験が、やっと活かされたのだ。活かされるまでに、随分と時間はかかったが。
余裕に満ちたアカイトが、リンに問い掛けた。

「今年はどんな悪戯なんだ?まあ、今年はひっかかってやんないけどなっ!!」
「今年のはねぇ……」

ニヤニヤとした笑みを深くし、リンとレンが言い放つ。

「「メイコ先生の手作りマフィン!」」
「マジか?!それのどこが悪戯なんだよ!!!」

レンが右手に持った袋をちらつかせれば、アカイトは勢いよくベッドから起き上がった。
しかしカイトはニヤニヤとした二人に嫌な予感がし、意気揚々と寄ってくるアカイトを不安げに見上げた。

「なあアカイト、いいの?」

問われてアカイトは、不敵な表情でかえした。

「今までの悪戯を思い返してみろよカイト。耳なし芳一ごっこと称した油性ペンでの全身ラクガキ、ガチ女装でメイド喫茶に行かされるは、挙句の果てにはグラサンかけて見知らぬ幼稚園児に混じっておままごと……!!最後のに至っては通報されかけた!!他にも思い出すだけで嫌な汗が滲む悪戯をどれだけ味わったんだ?!それに比べてこの難易度の低さ…普通に菓子だけ渡して帰そうと思ってた俺が情けなくてしかながない。鏡音の悪戯を受けてたった上で菓子を渡す。それでこそ俺達の長年の屈辱を晴らせるってもんだろう!!」

高らかに宣言し、アカイトがレンに手をさしだす。
レンが袋の中から出したのは、綺麗なオレンジ色のマフィンだ。
マフィンの形をしていないかもしれないと危惧していたアカイトが、勝ち誇る。ククク…と笑い声が口から洩れた。

「俺達が今年は菓子を用意してるって聞いて、急遽これを悪戯ってことにしたんだろ?菓子をあげた後に、お前らは俺の目の前でメイコせんせの手作りマフィンを食べる、と。確かにそんなことをされたら俺は己の浅はかさに発狂しかねないが、そうはいかなかったな!」

マフィンを受け取り、あくどい笑顔でアカイトがかじりつく。
アカイトは彼女の手料理は始めてだったので、かなり嬉しそうに食べていたのだが、やがてその顔に困惑が混じる。
どうしたのかとカイトが問いかけようとすると、モグモグと動いていた顎が止まった。

「だえじょいでjxしづsでぽおsぶrfごえdghl;dめいおさああわあぐがっ・・・・・・」

聞くものの精神を擦り減らすような奇声が、アカイトの口からあがった。
そしてそのままバタリと倒れたアカイトは、完璧に意識を失っているようだ。
突然の事に混乱し、なにが起きたかいまいちわかっていないカイトだったが、はっと意識を取り戻す。
アカイトが倒れた原因は、やはりマフィンなのだろうか。あれほど素敵な先生が変なものを入れたマフィンを作るだろうか、いや、ない。などと反語で自問自答するあたり、カイトの動揺も相当なものだ。

「ふ、二人とも……なに入れたの…?」

恐る恐る尋ねたカイトに、レンはあっけらかんとして答える。

「なにも、だよ。なんにも入れてない」
「知らなかった?メイコ先生はすっごく料理が苦手なんだよ」

見た目はおいしそうなのにね、と呟くリンの顔がやや青い。
もしや二人が朝一番に来なかったのはこのマフィンを味見してしまったせいなのではという予想がカイトの頭によぎり、それがあまりにもありえそうなのでカイトの背筋が寒くなった。
それで、とリンが告げる。

「カイトにぃ。  T r i c k    o r   T r e a t  ? 」

アカイトの奇声を聞いてもまだ崩れないニヤニヤ笑いで、レンが袋からマフィンを取り出した。
二人の、いや、マフィンの後ろにひどく恐ろしいものが見え、その異様な雰囲気におもわずマフィンに手が引き寄せられるが、すんでの所でカイトは手を止めた。
銀行強盗に襲われた銀行員よろしく、震えた声でカイトが叫ぶ。

「お、お菓子が。飴がそこの棚にあるから!それで勘弁して!」
「ちぇっ。残念」

つまらなそうに、レンが一先ずマフィンを袋に戻して立ち上がる。恐ろしいものが視界から消えて、カイトはとりあえず安堵した。
机の隣の棚にあった、飴の入った缶をレンが持ってくる。その表情がニヤニヤとしたものに戻っているに、カイトは疑問を持った。
しかしその疑問もすぐに解消される。
レンが缶の蓋を開け、ひっくり返すと。

「カイトにぃ。お菓子、ないよ?」

そこから飴は転がってこず、ぱらぱらと粉が落ちるばかりだ。
カイトの脳裏でアカイトの叫びが再生され、嫌な汗が背中を伝う。
リンとレンの二人が天使のような微笑みを浮かべ、カイトを見つめた。
硬直するカイトの前で、レンが袋に手を入れる。
かさり、と音をたてて、可愛らしいマフィンが現れた。

「ならしょうがないよな?リン」
「うん、そうだよね、レン。お菓子がないならやっぱり、」

「「悪戯だね!」」

レンが勢いよくマフィンをカイトの口に突っ込み、リンがその口を抑える。
なんだかよくわからない味の後に、なぜか舌を襲う激痛。
それが喉の辺りまで這い進んだところで、カイトは自分の絶叫を聞き、意識を飛ばしたという。














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ハロウィンの主役はカラー的にも鏡音だと思うのですよ!
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