ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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うだうだと悩む余裕すら無くなったアカイトが口を開いた。
「と、とりあえず、俺の自己紹介からしよっか!な!」
「はい、お願いします」
「俺はアカイト。カイト、つまりお前からうまれた存在だ」
「僕、から?」
「ああ。お前のデ「え、え、それじゃあ、あなたは僕の子供って、こと、ですか…?」
アカイトの言葉を遮ってカイトが爆弾を投下する。
無論、そんなことがあるわけないのはわかっているが、カイトの言葉に他の4人は確実に寒いものを感じた。アカイトも凍りついてしまっており、誰もカイトの暴走を止めることができない。
「僕と同じぐらいの歳に見えるのに…あ、あれ、そういえばさっき、うまれたって言ってたから…僕はお「グフォア!」!?」
戸惑いと共に呟かれる恐ろしい考えがギリギリのところで遮られた。奇声の発生源はアカイトだ。
我に返ったメイコがアカイトに向かって蹴りを放ったのだ。
倒れた体を真っ赤なマフラーを引っつかんで持ち上げ、恐ろしい形相でアカイトを睨みつける。
「あんたは…私の大事な弟に、何を吹き込もうとしているのかしら…?」
「い、いや、俺変なこと言ってないただその発想はなかったってだグェ」
マフラーを強く引きアカイトを無理矢理黙らせ、美しくも恐ろしい微笑みと共にメイコが言った。
「真面目にやれ」
「ちゃんとやってグゥッ」
口答えは許さないとばかりに容赦なくマフラーが再度引いてから、メイコは手をはなす。
顔面からべしゃりと床に落ちたが、幸い鼻血などは出ていないようだ。
若干涙目になりながらも、混乱しているカイトの勘違いを正す。
「あ、あのな、俺はお前のデータを元に作られたわけであって、実際に生物的な繋がりがあるわけじゃない。あとお前はどう頑張っても男だから」
その言葉を聞いて、カイトはほっと笑顔になった。
アカイトもこれに便乗したくなったが、なんせ後ろからの威圧感が並ではない。必死にカイトに様々な事を教えていく。
「お前の仕事は歌うのと、それ以上に重要なのは家事全般だ」
「家事が?」
「理由は簡単だ。そこにいるメイコは家事が不可nフギャァ」
「嘘つかない」
「俺嘘言ってねぇのに…」
「なにか言った?」
「いいえ」
「で、歌った曲はだな。ほら、パソコンの画面見てみろ。こんだけ歌ってる。なんか思い出す事は?」
「すみません、ないです」
「気になるのとかあったら言ってみろ」
「えっと、じゃあこのマンドラg「okカイト。それ以上は何も言うな」
「なんでですか?一体どんな意味が…?」
「…………それはだな…全ての男が夢にまで見rゲハッ」
「あと趣味は・・・・なんだっけ?料理とか?」
「え、僕もわからないです・・・」
「あーあーあー、思い出した思い出した。確か辛い料理を作って俺に出すことだった気ギャー」
「くっそ俺ちゃんとやってんのに!!!何故殴られなきゃならん!」
「アカイト、あなた阿呆でしょう」
「うるせぇよルカ!」
バシン、と床を叩いてアカイトが抗議する。メイコの視線を気にする余裕すら無くなっているようだ。
そのままダンダンと拳で床を叩いていると、アカイトの肩にそ、と手が置かれた。
誰だ、もしやまたメイコか、とアカイトが硬直するが、拳も足も飛んでこない。
恐る恐る視線をやれば、カイトだった。
「あの、すみません。僕のせいで…」
「やめろ、すみませんとか言うな。いや、言わないで。言わないでくださいお願いだから」
「そうよ。メイコに殴られたのだって、自業自得な事も何回かあったわ」
「自業自得じゃ無いときもあっ……いや、メイコねぇ、俺なんも言ってないよ」
「……それでも、痛い思いをしても、アカイトさんは僕に色々な事を教えてくれました。とても、感謝しています」
全成分が信頼と尊敬で占められた微笑みと共に、ありがとうという言葉がアカイトに送られる。
今まで向けられた事のない表情にアカイトは固まり――、
―――ボッ と火がついたかのように顔が赤くなる。
こんな恥ずかしい言葉も、カイトからのものならアカイトは軽く流すのだろうと予想していたメイコ達は、それをよくわからない形で裏切られ言葉を失った。
赤くなった顔を隠すように下を向いたまま、ぽつり、とアカイトが呟く。
「な、なぁ。カイトこのままにしといたら…だめ?」
どれだけ尊敬の目でみられたいんだよ、という突っ込みがレンの頭に浮かぶも、アカイトの言葉にヒいているせいでうまく口から出てこない。
ルカも、とても残念な眼差しでアカイトを見る事しかできずにいた。
戸惑うカイトの目の前で、椅子が一脚、空間を切り裂いたかと見紛う鋭さで、アカイトの頭に飛来した。
*
ざわつく空気に掬い上げられるように、アカイトは目を覚ました。
体中が痛い。特に後頭部の痛みが尋常ではない。
痛みの原因を探ると自分が意識を失う直前の事に思い当たり、なぜあんなことを言ってしまったんだ、とアカイトは自己嫌悪に悶えた。
むしろ気を失った衝撃でその辺りの記憶も飛んでいれば…、などと考えてようやく、アカイトはざわめきの元、声がする方へと目をやった。
テーブルについているのはメイコ、レン、ルカ、そしてカイトの4人。その4人が談笑している。
記憶が無いという不安はもう掻き消えたのか、むしろメイコも回復したのか、などと言いたいことがありすぎて何も言えないアカイトに、ルカが気づいた。
「やっと起きたの?」
「あ…あぁ。つか、カイト、お前?」
アカイトの言葉に、カイトは苦笑いを返す。
「ごめん。迷惑かけたね。大丈夫、俺だよ」
一人称や言葉遣いも元に戻り、纏う雰囲気も以前と同じそれだった。
「き、記憶が戻ったのか!どうやって?!」
「うん。なんか、情けない話なんだけどさ、」
アカイトが気を失った後、カイトがアカイトに駆け寄った時に、たまたまカイトの頭頂部辺りに傷が出来ているのに気づいたらしい。
覗いてみればそこには少量だが泥が付いており、もしやここから水が入りこみ、そのせいで記憶が飛んでしまったのではと3人は思いついた。
そこで駄目元で、泥を拭い傷口をドライヤーで乾かしたところ、あっさりとカイトの記憶はもどったらしい。
いきさつを聞いたアカイトがげんなりと呟く。
「お前の脳部分のシステムは、携帯のバッテリーかなんかかよ…」
「ごめんごめん。お礼に唐辛子3倍の麻婆豆腐作るから」
「当たり前だろ」
あーあ、とアカイトは再び床に転がったが、そんな彼をメイコは冷ややかに見つめた。
「カイト、そんな事しなくていいのよ」
「え?でもさすがにお礼ぐらいは…」
「まだあなたに言ってなかったけど、アカイト、こんなこと言ってたわ」
ハッとしてアカイトが起き上がるも、メイコの言葉を遮るには遅い。
カイトの表情が曇った。
「……、え?」
「……………もう、俺を初期化してくれ…」
絶望感溢れた言葉を呟き、アカイトは床に崩れ落ちる。
今にも崩壊しそうな彼の精神が、この数時間後に金色の悪魔によって完膚なきまでに砕かれるということに気付いているのは、悪魔の双子の片割れだけだった。
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題名のにある誰か成分の8割をアカイトが担当しています。記憶喪失なのはカイトなのに!
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