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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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秋の話

青いのと赤いのと、ちょっとだけ黄色いの

だらだらしている




見上げる空は青。その隅の方に掠めて映るのは紅葉の赤だ。
聞こえてくるのはミク達の声。
さっきなんだかしらないがメイコまで一緒に走っていっちゃって、俺はベンチで荷物とハーレム状態というわけです。荷物番ともいう。
ベンチによっかかって空を見てるもんだから、若干首が痛くなってきた。
さすがに限界だーって座り直して前を見れば、黄色く染まった葉っぱの中に赤い色が混じっているのが見えた。残念なことにメイコじゃない。メイコはあんなブンブン手を振ったりしない。
もちろん俺はあいつなんかに手を振り返すわけもなく、だからといってあいつを見つめてるのもなんだか気色悪いからまた空を見上げた。

あー、相変わらず空は青いし紅葉は赤い。秋だなぁ。そういえばリンとレンがスイートポテト食べたいって言ってた気がする。今日帰りに材料かってー、明日も俺暇だからそんとき作っとこう。

「よっ」

なんか最近暇があってもそんな動揺しなくなったな。一時期は仕事がいっぱい入って来て、暇な時間があったらそこで幸運が途切れちゃいそうで本当に怖かったけど、今はそうでもない。やっぱりいっぱい歌わせてもらってたからかな?

「そこの兄ちゃん、聞こえてんだろ?」

そういえば本当、ミク達は何してるんだろ。この公園は木がいっぱいあるしどんぐりでも拾ってるのかな?

「シカトしようったって無駄だ!俺様は話しかけ続ける!」

えーっと、どんぐりってたまに中に虫潜んでるよね。気付かず家に持って帰って置いとくと見事にやつらが侵入成功するんだよあぁ考えるだけでおぞましい!ちょっとミスった!

「カーイト君、あーそーぼ」

あー、焼き芋食べたいな。焼き林檎でもいいや。そういえば焼きアイスってないのかなこんどマスターに聞いてみよううーっと、なんか話題話題!

「カイトーカイトーカイトー」

話題話題話題…うー、そ、空が青いなぁ。で、隅っこの方には紅葉のあか…

「ようっ!魂のブラザー、ソウルの兄弟!」

じゃないし!

「アカイト!近いよお前!」

ガバッと体勢を戻してアカイトを突き飛ばす。だけどアカイトはひらりと避けて、ケラケラ癇に障る笑いを始めた。

「ははっ!シカト失敗してやんの!だっせぇ!」
「うるさいな…!無視してんの気付いてるなら話し掛けんなよ!」
「 や だ ね ! 」
「くッ………、で、なんの用なんだよ」

聞けば、ふらふらとベンチまでよってきて隣にどかりと座った。もちろん、置いてあったミクとリンのバッグは俺の足の上に移動させてある。むかつくね!

「特にねぇよ、お前ごときに用事なんて」
「………なんでお前は、暇だったっていうだけなのにそんな偉そうに言うかな」
「ま、いーじゃんいーじゃん」

だって俺様だしぃー、って、殴ってやりたい!いやもうむしろ殴ろう決めたうん殴るよ俺!
右手を大きく振り上げて、そのままやつの頬にたたきつけようとしたらアカイトが口を開いた。

「強いて言うなら、空が青かったからだな」
「空?」
「空。」
「空が青いのは珍しい事でもなんでもないだろ」
「珍しい事なきゃおまえんとこ来ちゃいけねぇのかよ」
「いや、そんなことはないけど」

アカイトのやつが変な事言うから、殴る気が失せた。しょうがないから、また空を見上げる。
夏みたいに鮮やかな色はしていないけど、秋独特の掠れたような空気の影響で空が綺麗に見えるのかもしれない。
というかただ単にこいつ友達いないのかも。そう思うとちょっと笑える。

「何笑ってんだ?怪しいから口縫い付けていい?」
「いや、ちょっと面白い気がして。あとさらっと変な事いうなって」
「まぁたしかに俺様、裁縫苦手だけどな」
「そういう話じゃ………って、お前わかって言ってんだろ」
「あたりまえじゃん」
「むっかつくなあ」

アカイトがまたケラケラ笑う。
そうしたらベンチの後ろの方から、てきしゅうだー、なんて叫び声が聞こえた。これは、リンかな。
アカイトも笑うのをやめて、不思議そうに後ろを振り返る。

「イッてっ」

なにかがとんできてアカイトに命中した。かなり強く当たったみたいで、額に手をあてて、ぐぉう、とか言って悶絶してる。あ、ごめんアカイトちょっとお前の気持ちわかったこういうの見てんの面白いね!
頑張って笑いを堪えていると、謎の襲撃者であるリンが楽しそうにぴょこぴょこ跳ねながら寄って来た。

「大成功!アカにぃに命中~」
「リン、よくやった!でも何投げたの?コンクリとかだとさすがにアカイト壊れちゃうから、小石ぐらいにしておいた方がいいかも」
「大丈夫大丈夫。コンクリじゃなくてこれだから」

はい、リンがポケットから取り出したのは、どんぐり。やっぱりどんぐり拾いをしていたらしい。なんでなげたの?って聞けば、なんとなく!って笑顔でかえってきた。まぁ、いいけど。
そこでようやくアカイトが復活した。なんか引き攣った笑いをしてるんだけどこいつ大丈夫か?

「リーンーちゃあん?俺様に何か用でもあったのかな?」
「べつに、ないよ!」

リンのすごくいい笑顔に、さすがのアカイトも固まった。というかアカイトの額にちょっと金属色が露出してんのは俺の目の錯覚だよね?
そんなあいつを丸々無視して、くるりと俺に向き合ったリンは、カイトにぃー、とマフラーの裾を引っ張る。

「あっちにね、ヤキイモ屋さんがきてるの。一緒に食べよ?」
「ん、でも荷物番あるから俺はいいよ。代わりにアカイトも連れてったら?」
「荷物ならだいじょーぶ!あっちにもベンチあるから、そこに移動しようって。だから、私も荷物移動手伝うよ」
「そっか。じゃあ俺も行くよ」

のそのそと荷物を集めて、固まりっぱなしの大荷物をどうするか考える。置いてってもいいけどさすがにそれはひどすぎるかもしれない。あ、リン先に行っちゃったし。

「アカイト」
「……………なに」
「聞いてただろ、ヤキイモだってさ。お前も行く?」
「……行く」

のっそり立ち上がったアカイトの額はやっぱり痛そうだったけど、まぁいいだろ。リンが消えた方に歩きだす。

さくりさくりと鳴る葉の音

ヤキイモ屋さんの車の横でドングリで死闘を繰り広げているメイコとレンを見て、アカイトの歩みが明らかに遅くなったのが面白くて笑った。


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