ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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ヤンデレが血みどろどろで闘っております。
ラグナとジン
「アハハ、アハハハハハハハハ!」
「…うるせぇぞ」
狂気に染まった笑い声が人気のない支部局に響く。
それを切り捨てるようにラグナが振るった大剣を、ジンは右腕だけで受けた。
己の一部が削がれる事にも構わず右腕で大剣を受け流すと、つられて開いたラグナの脇腹にむけて左腕で愛刀を抜いた。
「チッ」
ラグナはジンの腹を蹴り飛ばし、一先ず互いの間合い以上の距離をあけた。
後方にぐらりと揺れたジンの右腕から、ぼたぼたと血が滴る。
手首から肘のあたりにかけての肉と骨がほとんど分かれようかという傷のジンに対し、先程のやりとりでラグナが負ったのは脇腹の浅い傷だけだ。
己の代償に対し、与えたのはそれにそぐわない小さな傷だったというのに、ジンはなお狂った笑みを浮かべている。
「アハハ!兄さんはやっぱり強いなぁ。兄さんに切られたとこ全部、痛くて痛くてたまらないよ!」
「なら、さっさとくたばりやがれ。このキチガイが」
「キチガイだなんてひどいよ、兄さん。僕はまともだよ?」
「腕が削げかけて、悲鳴の一つもあげないやつがまともなわけあるかよ」
「あ、兄さんもしかして、これが気になってるの?」
ジンの右腕がピシりと硬質な音をたてる。皮一枚で繋がっていた箇所が徐々に腕の形を取り戻していく。
しかしそれは傷が癒えているわけではなく、血液を凍らせて肉同士を貼付けただけにすぎず、右腕はだらりと力が抜けたままだ。
傷口から覗く赤い氷以外は、普通の腕の外見と同じになったそれを見て、ジンはラグナに微笑みかける。
「ほら、これなら気にならないでしょう?」
「…どんだけイカレちまってんだ、テメェは!」
「ハハッ、なんだかそんな事もどうでもよくなってきちゃった。ねぇ兄さん、もっともっと殺し合おうよ!」
ジンの感情の高ぶりに呼応するようにして、剣を模った氷がラグナに飛来する。
舌打ちをしてラグナがそれを大剣で薙ぎ払うと、氷剣を飛ばすのに合わせて間合いを詰めてきたジンが、下段から切り上げる。
ラグナは紙一重でそれを躱し、すかさず踏み込んで大剣をジンの脇腹へと薙いだ。
見に纏った防具すら砕き深く食い込んだそれに、ジンが苦悶の表情を浮かべる。
しかしそれも幾許かの後に笑みに上書きされ、ジンは甘ったるい声でラグナに問い掛けた。
「ねぇ、にいさん。なんでこのまま真っ二つにしないの?」
「……」
「にいさんなら、かんたんにできるでしょうに」
「…るせぇ。テメェなんかにはこれで十分なんだよ」
「っぐ…!」
ぐねりと捻りながら大剣を引き抜くと、ジンの腹部からどす黒い血が溢れ出す。
動きを止めていたものが無くなり、ジンは再び切り掛かろうとするも、力無く倒れ込んでしまう。
先程から血を失いすぎていた事にジンは気付き、心底つまらなさそうに息をついた。
だくだくと肌を伝わる血に不快感を覚えながら、ジンはラグナを見上げた。
「ごめん兄さん。僕、動けないや」
「黙って寝てろ、クソガキ」
「ごめんね、ごめんね。でも、次はちゃんと殺すから、安心して。忘れないでね、兄さん」
ゆっくりと腹部の傷口も氷によって塞がれていくが、体外に溢れた血が元に戻るわけではなかった。
失血によって霞みゆくジンの視界はラグナの表情を捉えることはできず、当然、彼の顔に浮かんだ複雑な感情も読み取れない。
ジンはどこか虚ろな瞳で、ラグナに向けて微笑んだ。
「にいさんをころしてあげられるのは、ぼくだけなんだから」
そう残して、意識を飛ばしたジンの目尻から、つう、と頬を伝うものがあった。
それが苦痛によるものか、それとも別の何かによるものなのかはラグナにはわからない。
壊れた笑みを貼付けた弟を一瞥すると、ラグナはその場を後にした。
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題名がなかなか決まらなくて困りまくりました。
戦闘描写がうまくなりたいなー
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