ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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楽しい食事も終わり、リン達が眠たげに瞼を擦り始めた頃に、誕生会はお開きとなった。
最初はどうなることやらと不安だったが、新しく出会った彼らとも打ち解けることができ、カイトの胸には充実感が溢れていた。
それにしてもはしゃぎすぎたかな、と自室で一息ついていると、ドアをノックする音がカイトを呼んだ。
「 ? どうぞー」
「カイト、」
「あ、ジン。どうしたの?」
「忘れていたことがあったんだ」
涼やかな表情のジンに、なにを忘れたのかとカイトが思考を巡らせていると、ジンが部屋に入ってくる。
なにかを引きずっているようで、どうしたのかとカイトが目をこらすと、見慣れた赤色が目に入った。
「さっきまでは兄さんがいたからついつい忘れてしまったけど、約束したから」
「え…」
にこり、と天使のような笑顔で、ジンが引きずっていたものをカイトの前に持ってくる。
「復讐、しておいた」
「え?!」
ボロボロになっているこの赤色は、どう見てもアカイトだった。
そういえば、とカイトの記憶が蘇る。確かにそんなことを言っていた。ちょうどこの部屋でだ。
スッキリしたのか、イイ顔をしてジンが口を開く。
「それにしても、君達は本当に機械でできているんだな。僕達の方にも似たようなものがいるが、全然違う。斬ってみて驚いたよ」
「き、斬った?!」
「あぁでも、一応兄さんと会うことができたし、一本にしておいた」
恐る恐る目をやれば、左腕の肘から先が行方不明だ。
ジンが、無くしたらさすがに悪いかと思って、とマフラーの先を指差す。
「ジン…」
「なんだ?」
「さすがにこれは悪趣味、かな…」
マフラーに結ばれた左腕はなんともグロテスクだ。
やっぱり頼まなければよかったかも、と後悔が浮かびかけたが、今までのアカイトの行動を思い出すとそれもすぐに消えた。
「まぁ、これで少しは懲りただろう。それよりもカイト」
「ん、どうしたの」
「これの修理は君がやるんだろう?見ててもいいかい?」
「え?あ、うん、いいけど。別に面白いことはないよ?」
「いや、興味がある」
「あー、そういえばバイク弄ったりするの趣味って言ってたね」
言いながら、カイトは工具箱を取り出して俯せになっていたアカイトをひっくり返す。
適当にマフラーに結ばれていた腕を外し、断面の様子を見ると、小さく感嘆の声を漏らした。
「すごいね。関節のとこ切れてるからパーツいっぱい取り替えなきゃいけないかと思ったけど、こんなスパッと斬れてるならちょっと繋ぎ直すだけで大丈夫だ」
「……すぐ終わるのか?」
「なんか残念そうな顔だ」
「どうせなら、もっと壊しておけばよかったな」
「物騒だなー」
苦笑いを漏らし、カイトは切断面付近の皮膚にあたる部分を取り外す。むき出しになった人口筋肉を見て興味が移ったのか、ジンがユキアネサを取り出す様子は無い。
それに少しだけ安心して、カイトはドライバーを動かした。
人口筋肉と名がついているものの、素材の関係で人間のそれとはずいぶんと構造が異なる。
複雑に入り組んだ中から、無事だった部品を傷つけずに、切断された配線などの使えなくなったものだけが綺麗に取り除かれていく。
そこに交換用の部品を丁寧に組み込み、斬り落とされた腕を元の場所へと繋ぐ。
この作業の方が重要なのか、慎重に行っているので取り外すのと同じ速さではできないようだった。ジンは横から口出しするでもなく、興味深そうにその様子を見ている。
黙々と作業を続け、その半分ほどが終わった時だった。小さな呻き声が工具を操る音に混じる。
「 ぅう・・・」
「ん、アカイト起きた?」
「ぁあ?なにやって・・・・・!! 」
ゆるゆると動いていた瞳が、ジンを捉えて固まった。
その赤色に含まれる感情の意味がわからず、ジンは問いかける。
「なんだ?」
「ちょ、なんでジンが!」
「あ、アカイト今動くな!」
引き攣った声を上げ、アカイトが無理矢理後ずさった。腕は未だに中途半端に繋がったままである。
カイトの制止もむなしく、修復中の腕はぶちぶちという嫌な音を立てて再び落ちた。今度の切断面は先程のようなものでなく、引き千切ったような無残なものだ。
床に転がるそれを見て、はぁ、とカイトが溜息をついた。
残念そうな目でジンがアカイトを見る。
「お前はもう、左腕がいらないんだろう?」
「なにを言うか!元はと言えばジンがなぁ!」
「ふん。人が慈悲で左腕一本にしてやったというのに、もっと斬り落してほしいのか」「いやすいませんマジで勘弁して下さい」
「いやジン、直すのどうせ俺だからさ…」
「あぁ、そう考えるとカイトに悪いな」
凍りかけた空気が元に戻り、アカイトはほっと安堵した。しかしジンからは全力で目をそらしている。ぼこぼこにされたあげく腕を落とされたという恐怖の記憶が蘇らないようにだ。
そんなアカイトを知ることもなく、転がる腕を拾い、カイトが再び千切れた配線を取り除き始める。
その様子をじっと見つめて、ジンがぽつりと呟いた。
「カイト」
「ん?」
「それ、僕がやってみてもいいか?」
「あー、さっき俺がやってるの見てたもんね。別にい「やめてくれええええええ!!!!!!」
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