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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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年末年始企画のBB兄弟でジン退行話の後半です!
後半はやっとラグナとジン

前半を読んでない方はそちらからどうぞ≫前半




外出する気になれず、宿でダラダラとすごしていると控えめにドアを叩く音がした。
どうせ咎追いの類だと、ラグナが窓から逃げるか迎え撃つかをぼんやり考えていると、ドアの向こうの会話が漏れ聞こえてきた。

「ここに、にいさんがいるの?」
「た、多分・・・あのお医者さんは嘘はつかないと思うし・・・」

片方は、ジンの部下だというノエルだろう。しかしもう一つの声が、聞き覚えがあるはずなのに思い出せない。
話している内容もどこかひっかかるものがあり、ラグナは結局2度目のノックでドアを開けた。

「なんだよ」
「あ、よかった!違ったらどうしようかと・・・」
「あぁ?つーかお前、誰にここ聞いたんだ」
「そんなことより、もっと大変な事があるんです!」

ほら!とノエルが己の右側を指差す。
きょとんとした顔でラグナを見上げたのは、翡翠色の目をした金髪の子どもだった。
袖をまくった大きめのブラウスに、履いているのは統制機構の制服のスカートのようだ。それもサイズが大きいようで、顔は愛らしいというのに珍妙な格好になっている。
まぁこういうのが好きなやつもいるだろうなぁと適当に結論づけ、ラグナは再びノエルを見る。

「で?」
「え・・でって?」
「このガキがどうしたんだよ。誘拐してきたから匿えとか言うんじゃねーだろーな」
「ちょ、ちょっと、わからないんですか?!あなたの弟ですよ!」
「はぁ?なに言ってんだ」
「その、ちょっと、いろいろあって、キサラギ少佐が小さくなっちゃったんです」

しゃがみ込んで目線を合わせれば、面影がなくもない。
よくよく見てみれば忌々しい碧の気配もあり、ノエルが言う通りのようだった。主犯であろうテルミの姿を思い浮かべ、ラグナは舌打ちをする。
するとジンはそれが自分へのものだと勘違いしたのか、くしゃりと泣きそうに顔を歪めた。

「ラグナ=ザ=ブラッドエッジ!少佐を泣かせないでください!」
「あー、ワリィ。お前にじゃねーよ、ジン」
「少佐が、お兄さんに会いたいって言うから連れてきたんですからね。泣かせるんだったら私が連れて帰ります!」
「却下だ。兄貴として弟に女装させるようなやつのところに預けるわけにはいかねぇ」
「ちがっ!不可抗力です!統制機構には今の少佐に合うサイズのズボンがなくてですねぇっ!そのスカートもベルトをしてやっと!」
「ほんとかよ。ほらジン、こっちこい」

ラグナがジンに手を差し伸べる。
しかしジンはその手をとらず、握っていたノエルの右手にさらに力を込めた。

「どうしたの?」
「おねえちゃん、にいさんは?」
「は?」

泣きだしそうなジンの声に、ラグナは間抜けな声を上げる。

「にいさん、いないよ?」
「え、でもこの人、キ・・・ジン君のお兄さんじゃない?」
「ちがうよぅ、にいさん、こんなのじゃないもん・・・」

堪え切れなくなったのか、ジンはにいさん、にいさんと泣きだしてしまう。
考えてみれば、こうなるのは当然だった。記憶まで幼いころのものになってしまえば、ジンの会いたがった「にいさん」は今の「兄さん」とは別人と言ってもいいくらいだろう。
ぼろぼろと泣くジンが痛ましく、やっぱり連れて帰ることを伝えようとノエルはラグナに向き直った、ところで凍りついた。

「おい、ノエル」

なにかどす黒いものを纏い、ラグナが口を開いた。表情は怒っているのか泣いているのか笑っているのか。とりあえず「こんなの」発言にかなりの衝撃を受けているようだ。

「こいつは俺が引き取る。俺が兄貴なんだからな。お前は治し方探して来い」
「え、ちょっと!」

泣いているジンを軽々と担ぎ、ラグナは部屋に引っ込んだ。
ノエルは閉められたドアを叩いてみたが、中から反応は無い。
悲鳴でも聞こえてこないかと心配してしばらくドアの外で聞き耳を立ててみるも、部屋からはなんの音もしなかった。
小さいジンを思い名残惜しげに溜息をつき、ノエルは渋々、統制機構に戻っていった。



「行ったか・・・」

ドアの前の気配が遠のいたことを確認すると、ラグナはベッドの端に座っているジンに目をやった。
未だにスカートを履いたまま泣いている姿はなぜだかラグナに罪悪感を抱かせたが、それを振り払ってジンの隣に座る。
それだけで目に見えるほど怯えたジンにラグナは傷つくが、めげずに口を開く。

「あー、ジン、」
「ぅっく・・・ひぐっ・・・にぃさん・・どこぉ・・・」
「俺がお前の兄貴なんだけど」
「ちがう もん・・にいさんは、こわくないもん」
「俺が怖いって言いたいのか?」

ちらりとラグナを見た後に、ジンは頷く。
魂が抜けるような溜息をつき、ラグナはベッドに上半身を投げ出した。
今も昔も、表現の方法は違えどジンはラグナにべったりだったのだ。この反応につい苛立って無理に連れてきてしまったが、こうも怯えられると後悔が滲み出てくる。
ジンは泣きつかれてきたのか、時折鼻をすするものの、もう涙は流していなかった。
泣いた後もしきりに目を擦る仕種は記憶にあるものと同じで、ラグナは記憶よりも小さな体を抱きしめたい衝動に駆られる。
けれど、そんなことをすればまた盛大に泣き出すことは目に見えていた。
幼い頃のジンは泣いた後、「にいさん」が慰めてようやく笑顔を取り戻すことをラグナもよく知っている。そして今のジンの「にいさん」は、彼と揃いの髪と目の色をしているだろう。
白くなってしまった自分の髪を忌ま忌ましく掻きむしり、ラグナは溜息をついた。
もはや会話などできないような空気になり、ラグナがノエルがやってくるのを切実に待ちはじめた頃、ぽつり、と湿った声が零れた。

「にいさんは、こわくなんかないもん」

小さな金色の頭は傾き、俯いている。ラグナに話しているというより、思い出していることが自然と口に出ているようだ。
下手に口を挟むとまた泣きだしそうな気がして、ラグナは寝転んだままジンを見つめる。

「おこるし、あいつのことばっかかまうけど、やさしくて、かっこいいもん。にいさんはぼくがないてたら、いつもぎゅってしてくれる。なのに、」

思い出すうちに、「にいさん」がいないことが悲しくなったのだろう。涙で詰まったのか、言葉が途切れる。

「にいさん、ぼくがきらいになったのかなぁ。さやのほうがすきだから、きてくれないのかな」

大粒の涙を零すその姿を見ていられなくなり、ラグナは思わずジンの細い腕を引っ張った。
簡単にベッドに倒れた軽い体をそのまま腕で抱き寄せる。
潤んだ瞳には戸惑いの色が浮かんでいた。

「嫌いになんかなってねぇよ」

ぽんぽん、と残ってた記憶と同じように、ジンの頭を優しく叩く。

「お前のにいさんは、お前もサヤも大事なんだ。どっちのが好きとか嫌いとか、そういうのはねぇ。安心しろ」
「でも・・・なんでわかるの?」
「だから言ってんだろ?俺もお前の兄さんだって」
「でも、かみのけがしろいよ」
「それは、まぁ・・気にすんな」

そのまま抱きしめていると、ジンも落ち着いてきたようだった。
いつのまにか瞼も閉じかかっており、ジンはすぐにでも眠ってしまいそうだ。
頬に残った涙の跡を拭ってやると、ぼんやりとした翡翠がラグナを見上げる。
ラグナの色違いの瞳と目が合うと、ふにゃりと柔らかく笑った。

「きれいなしろだね、にいさん」

それきり、すぅすぅと安らかな寝息をたてはじめた弟に、ラグナは小さく笑う。

「こんなのとは違うんじゃなかったのかよ、お前のにいさんは」

ぽん、と金色の頭を軽く叩くと、小さな体はもぞもぞとラグナの方へ擦り寄ってくる。
しっかりと抱きしめてしまったせいか、起こさずにジンから離れるのは難しそうだ。
仕方ねぇな、と小さく呟くと、ラグナはジンをしっかりと抱きしめ、自らの瞼も閉じる。
懐かしさと、一抹の苦しさを感じながら、ラグナも眠りについた。


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