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ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

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某廃墟ゲームのお話
ネタバレは、一応ないと思います

セトとPF




錆び付いたドアを通り抜けると、割れた天井から差し込む光りに照らされた、焚火の後がありました。
それを見るとこの人は安心したようで、少し歩く速度を早めて焚火後に向かいます。
まだたどたどしいけど、初めて会った時よりは手早く火を付けると、彼は煌々と燃える焚火の近くに座りました。
さっき、大きな野良犬に襲われたばかりでしたから、とても疲れていたみたい。
重たい私が背中にいるせいで、彼に負担がかかっていることを、私はとても申し訳なく思います。
彼の負担になっていることをわかっているのに、一緒にいたいと思っているから、なおさらに。
あとで、もう使えないパーツの取り外しを頼んでみようかしら。
そうすれば、見た目は悪くなってしまうけど、多少は軽量化できるはずです。

「ねぇ、PF。起きてる?」
「はい、もちろん」

黙ったままだった私への皮肉でもなく、彼は本当に私が眠ってしまったのかと思ったようで、声を潜めて言いました。
私はただのナビなのに、眠りなんて必要としないのに、彼はいつも、私を人間と同じに扱ってくれます。
それが、彼の寂しさからくるものだとわかってはいても、私はその寂しさが、ついつい嬉しく感じてしまうのです。
こんな彼だから、パーツを外してください、なんて言ったら、85パーセントの確率で、大慌てで断りそう。
彼がぶんぶんと首を振りながら、少し顔を赤くして断るのを見るのも楽しいかもしれませんが、私はそこまでいじわるではないので、軽量化はあきらめておきましょう。
私が起きている事がわかったからか、声の大きさをいつも通りに戻して、彼は話し始めます。

「あのさ、PFは、キャラメルってどんな味か、知ってる?」
「キャラメル、ですか?」
「うん」

そういえばさっき、彼はキャラメルの宣伝ポスターの前で立ち止まっていました。
その後、なにか言いかけた時に野良犬に襲われたので、本当はさっき尋ねようと思っていたのでしょう。
データベースを検索すると、出てくるのはキャラメルの成分や作り方ばかり。肝心の味については、ほとんど出てきません。
唯一でたのが、甘い、という事だけ。

「検索結果によりますと、甘い、みたいです」
「へぇ、甘いんだ」

どんな風に甘いのか、そういうことも全然わからないおおざっぱな情報なのに、彼は、教えてくれてありがとう、と笑顔で言います。
その笑顔は、私が伝えた情報にはもったいないほどで、もっともっと調べれば、もっともっと伝えられたかもしれない、と後悔しました。

「あ!検索結果ってことはさ」

彼が何かに気付いたのか、手をぱん、と合わせて言います。

「PFも、キャラメルって食べたことないんだ?」
「え、あ、はい。私、」

ナビですから、というのは、なんだか少し、憚られました。
なんででしょう、私がナビだということは、彼もわかっているはずなのに。

「私、も、食べたこと、ないです」
「そっか。じゃあ、僕と同じだね」

おんなじだ、と嬉しそうに呟いて、彼はまた少し、にこにことしているみたいです。
人間である彼の、食べたことがないと、ナビである私の、食べることができないは、全然違うものです。
だけど私は、それを訂正することもなく、こんな提案をしてしまいました。

「あの、私もあなたも、キャラメルを食べたことがないのなら、今度、一緒に食べてみませんか?」
「一緒に? いいね!PF、すごくいい考えだ!」
「食べられるキャラメルがどこにあるか、わかりませんけど」
「大丈夫だよ、きっとある。探そうよ、一緒に!」
「……はい!」

ああ、なんてことを言ってしまったんだろう。キャラメルがあっても、食べられるようなものは残っていないだろう事も、私がキャラメルを食べれない事もわかっているのに。
だけど、言いたくなってしまったのです。だって、これは。
人間がたくさんいて、キャラメルもたくさん作られていたときに、私も彼と同じ人間だったら、彼と一緒にいて、笑いながら、お話する。
とろとろに甘いキャラメルだね、とか、すっきり甘いキャラメルだね、とか、そんな事を。
私が、ついつい願ってしまったことだから。
人間がいっぱいいたら、彼が私を見つけることもないだろうし、そもそも私も量産されたナビのうちの一つでしかないけど。
こんなことが、できたらいいのに。

「よし、それじゃあもう行こう。キャラメルも探さなきゃいけないしね!」

よいしょ、と立ち上がった彼に私は、そうですね、と声をかけました。
いつもより軽い彼の足取りに、罪悪感がちくりとします。
それでもどうか、一緒にキャラメルを食べれますようにと、私は誰かに願いました。












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キャラメルのポスターがあった気がしたので。

PFは、かわいい。



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