忍者ブログ
ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
 

誤字等気になることがあり
ましたら是非ポチっと。只今、
御礼文でヤンデレだらけ




[391]  [390]  [389]  [388]  [387]  [386]  [385]  [384]  [383]  [382]  [381
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


新城Pの What's COLOR? にインスピレーションを受けて書いたものでございます
色がわからないカイトについての話
ルカとミクとアカイトと鏡音とメイコとカイトです




彼の視界には一つ足りない。
自身が忘れられない青色をしているというのに、それもわからないのだという。
初めてにそれを言った時彼は、欠陥品なんだ、と続けた。
それがやけにカンに障って、気がついた時には彼の笑い顔を叩いていた。
じんじんと、手が熱くなっていったのを覚えている。
誰かに手をあげたのはそれが初めてだったから。
痛みを与えた方だというのに右手は徐々に痛みを訴えてきて。
人間に近付けようとした制作者への苛立ちもあって、酷い目で彼を睨みつけた。会って数分の相手にするものじゃなかったと思う。
それでも彼は、なにか気に障ったかなと、私に反発するでもなく、申し訳なさそうに私に笑った。
ゆるゆると痛みを伝えてくる私の手より、叩かれた彼の頬の方が赤くなっていた。
それでも彼は、その赤さに気付かずに笑うのだ。





お兄ちゃんの視界には一つ足りない。
それでもお兄ちゃんは、私の髪をキレイだねと言ってくれる。
それは他の人も言ってくれることだけど、お兄ちゃんのキレイだね、は、色じゃなくて、私の髪を褒めてくれる気がしてすごくうれしい。
色じゃなくて、私。すごくうれしい。
お兄ちゃんの目をみんなはかわいそうって言うけど、そんなことない。
きっといろんなものが見えてるんだと思う。私も同じものが見えたらいいのに。
色が無かったら色で見えないものも見えるかもしれない。いいなぁ。見たいなぁ。
だってお兄ちゃんは、色が違うものでもそれぞれキレイだって言う。何がキレイなんだろう。どこがキレイなんだろう。
赤くてキレイなんじゃなくて、青くてキレイなんじゃなくて、どこがキレイなんだろう。
前、なにがキレイなの?って聞いてみたら、よくわからない、ってお兄ちゃんは言った。
私も見えなかったら、お兄ちゃんと一緒になにがキレイなのか考えられるのになぁ。





あいつの視界には一つ足りない。
コピーである俺にはあるのにあいつにはないのはなぜだろう。
オリジナルよりも優れたコピー。でも、そこにはなんの優越感もなかった。
そもそも、あいつの欠陥は俺のアイデンティティを消失させている。
いくら俺が俺であっても、色の無いあいつにとっては俺はあいつになってしまう。
背丈も顔も同じ。唯一違う色という点を消し去れば、俺はあいつのコピーでもいられなくなる。
あいつだって、俺があいつとは違う事を考え俺があいつとは違う事を選択し俺があいつとは違うものを好むことを知っている。
しかし、あいつの認識では俺はあいつなんだろう。
だから、俺があいつを殴ってもあいつが俺を殴っても、あいつの表情は特に変わらない。
あいつが怖いのは他人が傷つく事だから、あいつ自身が傷つく事には無頓着なのだ。虫酸が走る。
あいつが、仮に色を取り戻したとして、俺を見たときにどんな顔をするのだろう。
青とは掛け離れた色だと知った時の絶望を、俺は踏みにじりたい。





カイトにぃの視界には一つ足りない。
たった一つ欠けただけなのに、他にもいろいろと落っことしてる。
信号機の色もわからないから、私は外でいつもカイトにぃの右手を握る。俺はいつもカイトにぃの左手を握る。
色違いの食器には、それぞれ絵を描いた。
赤には鷲青にはクジラ緑には鹿ピンクには兎黄にはライオン橙には虎。
綺麗な青色の空のとき、私は大きな声で喜ぶ。
どんよりとした鈍色の空のとき、俺は大きくため息をつく。
夕焼けで空がピンクと藍色が混ざった時は、二人で夕焼けの歌をうたって、いろんな星がよく見える夜は、二人してカイトにぃの布団に潜り込んだ。
カイトにぃの欠けてしまったものを少しでも伝えられたらいいと、俺は思う。
私は、カイトにぃに知ってほしいの。空の青色が綺麗で、花のピンク色が可愛い事を。
伝わってないかもしれない。全然わからないかもしれない。
でもいつか、私と俺と同じ物を、見てもらいたいと思う。





カイトの視界には一つ足りない。
けれど、それがどうしたというの。だってカイトは、足りていようがなかろうが、カイトだもの。
うじうじしてたり甘やかしてたり、馬鹿なことしてたり甘やかされてたりするけど、それはカイトが足りないからじゃなくて、カイトだからよ。
だから、見えても見えなくても、私の弟であることも変わらない。そんなことはどうだっていいの。
見えない事を使って殴りたくなるような馬鹿なことを言ったりするけど、それだってどうせたまたま、そこに見えないって事があったから使っただけ。
見えてたら見えてたで、ほかの事を使って殴りたくような事を言うのよ。
まぁでも、私のこんな考えが全部間違ってて、カイトがまるきり変わっちゃっても、私は関係ないって言うんでしょうね。
本気で殴りたいようなやつになったとしても、どこかで許しちゃう気がするもの。
どうしようもない考えだけど、仕方がないわ。
だって、カイトは私の弟だし、家族ってそういうものでしょう?





俺の視界には一つ足りない。
らしい。
足りないと言われても、正直よくわからない。でもまぁ、よく人に指摘されているから確実なんだろうけど。
見えてはいないけど、それでも色が何なのかはわかってる。
赤は、暖かくて優しくて憎しみがある。ピンクは怒りと切なさ。
緑は憧れと純粋さで、黄色は明るさと憐れみだ。
他にもたくさんの色を俺はわかってる。だから正直、色が見えても見えなくても関係ないと思うんだ。
いろんな人と話したりしなくちゃわからないけど、それも楽しいし、そこまで不自由は感じてない。
自分の色がいまいちわからなかったりはするけど、それも特に問題無い事だ。俺の事だし。
俺の色は、俺が知らなくてもみんなが与えてくれてる。
ああ、だけどその色がわからないのは残念だ。せっかくみんなが選んだ色なのに。
いったいどんな色を見ているのか。
今度聞いたら、教えてくれるだろうか。


PR
忍者ブログ [PR]