ヤンデレからほのぼのまで 現在沈没中
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な、ななな、なんと夏企画に贈り物がっ!!!
音端様より素敵な吸血鬼兄さんです!
むかーしむかしのお話です。
ある暗い森に、とても大きなお城がありました。ちなみに某暗い森のサーカスとは全く関係ありません。
そのお城には、一人の男と男女の双子が住んでいました。完全に城の広さと釣り合ってませんね。
さて、おどろきなのが。
何と男は吸血鬼、少年少女は蝙蝠だったのです!
「あーこのまま寝てたーい、血ぃ吸いに行くのめんどくさーい」
「じゃあ寝てろ、出来ればそのまま永遠に」
「でもレンー、私たちも夜になったから食いもんとりにいこーよー」
「めんどいから俺行かない」
「じゃあ私もいかない」
「僕もここで寝てるー」
「そのまま永眠してしまえ」
..........同居している割にあまり仲は良くないようですが。
さてさて、男には好きな人がおりました。
城から一番近い街の住人の間では「世界で1番の美人」と噂されている、まさしく聖人と呼ぶべき美しさ。
ぜひ彼女の血をひとすすりしたい、と男は彼女を初めて遠目に見たときから思っていたのでした。
これが世間で言うところの一目惚れですね。
しかし、1つどころか27個ぐらい問題がありました。
小さい問題は色々省きますが、1番の問題は。
男がかなりの面倒くさがりであったことでした。
「いやーだってさー、城から徒歩1時間で飛んでも20分かかるところに週3のペースで出向くなんて愚の骨頂だよ、あーっとレンそこのサプリメントとって」
「あんたそのまま鉄分不足で天国いっちゃえば?あ、あんたには地獄の方がお似合いかも。あとこのサプリもうとっくに空っぽなんだけど」
「空き瓶は捨てようよ、カイ兄.........」
「いやリンとレン、まだまだ甘いな」
男がどっこいせという掛け声とともにソファーから起き上がり、小さい羽の生えた双子の方を向きます。
「何故、既に空になっているFeの瓶を棚に陳列しておくのか?その理由を考えたことは無かったのかい?」
「捨てるのがめんどいからだろ?」
「レンと同じ意見」
「やっぱり二人とも修行が足りないっ!」
びしっ、という効果音付で双子に指を突きつけた男に、何の修行だよ俺はそんなこと全く聞いてねーぞ、と男に聞こえないようにレンが呟いた。
「空き瓶を保存している、その理由は!ラベルを見ては鉄分を摂った気分に浸るという癖を今日も無事に遂行すべk」
「地獄に落ちろ」
「上に同じく」
「ぐほっ」
双子による回し蹴りとアッパーが華麗に炸裂しました。
「さっさと誰かの血でも吸って来い!」
「あ、D○Cにサプリメント頼んどいてねー。ビタミンCと鉄分!」
「おっけー、カルシウムにビタミンAね!」
「払いはあんたに任せるから」
「私とレンはお金持ってないもんね☆」
更に男は城から追い出されました。
それでも全くめげていないのはポジティブなのか男の頭が弱くて状況が把握できていないのか。両方有り得ますね。
ちなみに蝙蝠の双子は人間からよくお金を盗みます。二人の貯金箱に1万円ぐらいあるはずです。
男は街に向かって森の中を歩き出しました。
何故街まで飛んでいかないのかというと、つまりそれは「おなかが空いて力が出ないから」という呆れた理由なのでした。
「あー.....血が欲しいー.........」
男の口から、尖った歯がちらりと覗きます。
月光が森の木々に遮られながらも彼の姿を照らします。
よっこいせとマントを羽織りなおし、またとぼとぼ歩き出そうとしたその時。
「......あんた、こんなところで何してる?」
突然耳元で聞こえた声に、ざっと後ろに飛びのきます。
気がつくと彼は、怪しげな3人組に囲まれていました。この男はどれくらいぼーっとしながら歩いていたのでしょうか。間抜けですね。
それはともかく、3人組は男が1人、女が2人。女は、ツインテールの少女とロングヘアーの二十歳前後の女。
先ほど彼に囁いたツインテールの少女は眉間に皺を寄せながら懐中電灯を彼に向けると、
「.....怪しい。幾つか質問するからそれに適切な回答を寄越せ。ちなみにあんたに拒否権はない」
「............はぁ?」
怪訝な顔をする彼に、ロングヘアーの女が言いました。
「もしかして私たちが誰だか解っていないのですか?ふん、非常識な輩ね。神威さん、あれを」
ずーっと黙っていた「神威」と呼ばれた男が、懐から手帳のようなものを取り出して彼に放ります。
ぱしりと受け取ったその手帳をめくると、
<栗譜町第九警備団 神威がくぽ>
1ページ目に写真つきでこう記されていました。ちなみに栗譜町というのは城から一番近くて、且つ彼が一目惚れした相手が住んでいる町のことです。
彼は手帳を放り投げ、神威に返しました。
「私たちも同じよ。さて、これで私たちの身分が解ったかしら?」
「つまりあんたは今、所謂「職務質問」を受けている。無駄に反抗しないことだ」
.......これ、結構まずかったりする?僕吸血鬼だし。知られたら色々言い逃れとかしなくちゃいけないし。
そんなことを呑気に考えている間に「職務質問」は始まってしまいました。
「えーと、まずさ、何その怪しい格好。仮装パーティの帰り?」
ぱたりと神威のものと同じデザインの手帳を取り出して真ん中あたりを開き、ペンを握りながらツインテールの少女が訊ねました。眉間の皺が先ほどより5本増えています。
「あ.....は、はい、そうなんですよー。あのフライドチキンおいしかったなー」
男はシラを切り通すことにし、とりあえず頷いておきます。
まだ食べたことないけど名前だけは知っているフライドチキンの味を想像しつつ、じゅるりと涎を飲み込みます。もちろん演技です。
よし、これならばれない!多分!と男は自分の演技力を信用することにしました。
が。
「ばーか。嘘だってばれてるにきまってるだろこの甘ちゃんが。いや吸血鬼が。........警備団なめんな」
「やっぱりそうでしたか。神威さん、初音さん、やっちゃいますか」
「ん。ちょっとあんた、任意同行.....もするわけないな、吸血鬼なら」
どうやら既にばれていたようで、初音と苗字らしきものを呼ばれたツインテールの少女が手帳を閉じました。手帳はそのままポケットへGO。
3人がさっと警棒を構えます。
「........ふーん............」
「興味なさそうにしてますが、生憎吸血鬼は市民の生命を脅かすとして上から排除もしくは逮捕するようにと通達がきているのですよ。
従って少しあなたを傷つけることになりますが、吸血鬼の回復力なら問題なしですわよね?
憎むならあなたが吸血鬼に生まれてきてしまったことを憎んでくださいね、私たちは命令に従っているだけなのでね」
「ぜひともあんたには文句を言わずに気絶してもらいたい」
ひどい言われようです。当の吸血鬼も俯きつつこう言います。
「.....ひとつだけ異論を唱えさせてもらうと、僕も生きていく為に血を少しだけ分けてもらわなきゃいけないんだよねー.....言うならば君らがハンバーガーとか食べてる感じ?
鉄分は出来るだけサプリメントで補ってるけど2ヶ月に1回くらいは人の血を吸わなきゃいけないし、僕の涙ぐましい努力も認めてほしいところなんだけどなあ」
「その努力をなるべく排除して楽になる方法があるわよ?」
「ぜひとも教えてくれると嬉しいな」
「死ぬことだよ」
口角を上げながら呟くと首元に突きつけていた警棒を引っ込める初音。同様に神威とロングヘアーの女も警棒を引っ込めます。
おや、と男が思っていると、更に口の端を吊り上げながら初音が言いました。
「この警棒さ、こういうときのために工夫がなされていてね」
警棒に手をかけ、ぐっと力を込めて引っ張る。
すとんと黒い部分がすっぽ抜けて、中から銀色の刀が現れました。
「さっきまでは逮捕するつもりだったけど、.......ま、あんたも苦労してるみたいだし楽にしてあげるよ。巡音も文句はないよな」
「ええ。ふふふ、逮捕ではなく排除、か。久しぶりね、神威さん?」
巡音という苗字らしいロングヘアーの女の言葉に神威が重々しく頷きます。
既に彼の手にある警棒は銀色の刃と化していました。勿論、巡音の警棒も。
「じゃ、さっさと終わらせますか」
そう冷静に言い放ち、空気の裂ける音を鳴らしてから男に向かって3人が走り出します。
その足音に紛れたのか、男の「これあんまり使いたくないんだけどなあ......」という呟きは3人に届きませんでした。
突然顔を上げると、くるりと3人の顔を見ます。
.............訂正、正確には「3人の瞳を見ます」。
びくりと、3人が立ち止まりました。まるで足の部分だけ時間を止められたかのように、本当に急に。
顔に驚きの色を宿したのはほんの一瞬で、すぐに無表情になります。
かちゃり。
その音は、初音が刀を警棒という本来あるべき姿に戻した音でした。
神威と巡音も同様に、銀色の刃を黒い警棒の中に忍ばせます。
「.....よし、異常なし。次の場所へ向かうか」
「そうですね」
どこか感情のこもっていないような声で言い、そのまま3人は街の方へと歩き出しました。
その後姿をしばらく見つめ、背中が見えなくなったあとに少し視線を彷徨わせてから、
「さ、暗示が解ける前に城に帰ろっかな」
そう誰ともなしに言ってから城に向かって走り出しました。
......が、すぐに立ち止まりました。
「.............お腹すいた」
リンとレンはちゃんとサプリメントを頼んどいてくれたかな、と考えつつゆっくりと歩き出しました。
その後、彼......カイトは城の窓から部屋に入った瞬間お腹にレンの飛び蹴りが炸裂し、30メートルの高さからコンクリ固めの城下に落っこちたらしいです。
おしまい。
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なんと可愛い!!
本当、音端様のところのボカロ達はみんな可愛くて悶絶します・・・!
企画参加ありがとうございましたっ!!
素敵な文章が読める音端様のブログはこちら!
→端っぽに虹色の音が隠れてる。
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